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いまさら④
「ん......自分でも、そう思う。
だけど、確信が欲しかったんだ。
......もう大切な人に、二度と裏切られたくなかったから」
いつも飄々としていて、悩み事なんて何も無いものだと、勝手にずっと思っていた。
だけどこの男も俺みたいに、もう簡単には他人を信じる事が出来なくなってしまったのかも知れない。
だとしてもすべて分かった上で俺の気持ちを試し、わざと傷付けた過去をすべて許してやれるワケじゃないけれど。
「......恋人は、作らない主義じゃなかったのかよ?」
彼から体を離し、苛々を誤魔化すために煙草に火を付けた。
和希はフッと小さく笑い、静かな口調で俺の問いに答えた。
「そのつもりだったんだけどね。
......翠が他の男に盗られるかも知れないと思ったら、堪えられなかった」
本当に、なんて勝手なヤツなんだよ。
......俺は、モノじゃない。
「アイツとは、そういうんじゃねぇけどな。
俺の事、性欲処理の道具みたいにしか思ってないし」
すると和希は大きな溜め息を吐き、呆れたように言った。
「お前さぁ......ホント、鈍感だよな。
その、背中。またキスマークだらけにされてるぞ?」
それに驚き、彼の顔を凝視した。
「たぶんだけど、ソイツも翠の事、ただのセフレだなんて思ってないと思うよ。
......もちろん譲る気なんて、微塵も無いけどな」
ニッと和希が、いつもみたいに勝ち気で傲慢な顔で笑った。
「......譲るも何も、俺はお前のもんでもねぇし」
「でも俺は今でも、お前は俺のモノだと思ってるよ」
戸惑い、視線を下げ、また煙草を口に咥え直そうとしたのだけれど、それは和希の手で阻止された。
そして文句を言ってやろうとした瞬間、キスで唇を塞がれた。
それからそっと唇を離し、和希はまるで祈るように俺の耳元で囁いた。
「愛してる、翠......。
だからもう一度、俺を好きになって」
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