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罪悪感②
絶対にコイツの告白なんか断るつもりだったはずなのに、彼の甘く蕩けるような笑顔を前にすると決心が緩みそうになり、慌てて顔の筋肉を引き締めた。
だけどときめいたのは彼の言動にではなく、顔が好み過ぎるせいだと結論付けた。
......だってそうじゃないと、困る。
こんな最低な男の事なんか、もう二度と好きになんてなりたくない。
「用意出来たら、声掛けるから。
先に洗面所、使ってくれてて良いよ」
いつも通り、そっけなく告げた。
すると彼はクククと笑い、いつもみたいに了解とだけ答えた。
***
通勤電車内での和希の態度は、本当に普通だった。
それこそこちらが、拍子抜けしてしまうくらい。
それが気楽であるのと同時に、何処か物足りなさを感じた。
自分でもホント、なんて我が儘なんだって思うけれど。
しかしうちの会社が入っているビルのエレベーター内で二人きりになると、彼はしれっと手を繋いで来た。
こんなところをもし次の階で誰かが乗り込んできたらと思うと、振り払わなきゃって思うのに、それが出来ない。
......この温もりを、失いたく無い。
でもそこで、ポケットの中のスマートフォンが震えた。
だから繋いでいるのとは反対の方の手で取り出し、その内容を確認すると、翔真からメッセージが届いていた。
一気に現実に引き戻され、慌てて和希の手を離す。
「例の、年下くんから?」
その声に反応し、自然と顔を上げた。
するとそこには真っ直ぐ俺を見下ろす、和希の琥珀色の瞳。
何となく責められているような気がして、慌てて目線をスマホに戻した。
「......お前には、関係ないだろ」
今までなら、笑ってスルーされていたであろう会話。
なのに彼はふぅ、と小さく吐息を吐き、言った。
「関係なく、無い。
もう連絡すんなとは言わないけど、俺だって多少は傷付くぞ?」
困り顔で、静かに微笑む和希。
こんなの、なんて答えるのが正解か、分からない。
これまでこの男にされてきた事を思えば、罪悪感なんて感じる必要はないはずなのに。
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