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偶然か、必然か①
『ごめん、ちょっと仕事が立て込んでて。
終わり時間が読めないから、また今度にして貰っていい?』
別に俺らの関係はただのセフレだから、気に病む必要も、罪悪感を感じる必要もないはすだ。
だけどやはり何となく翔真と顔を合わ辛かったから、嘘のメッセージを返した。
俺が送ったDMに既読はついたのに、返信は結局戻っては来なかった。
ヤれない相手には、用はないという事かよ?
そう思うのと同時に、何処かホッとする自分もいて。
どうしたいのか、どうするのが正解なのか分からず、また少し途方に暮れた。
***
その、翌日。この日は金曜という事もあり、皆が定時に近い時間に帰っていった。
だけど俺は帰ってもどうせ家には自分だけだし、やる事も溜まっていたから、事務所に一人、残っていた。
「お疲れ、翠。明かりが点いてたから、もしかしてと思って覗いてみたんだけど。
まだ仕事、終わんねぇの?」
営業先から戻ってきたところらしい和希が、事務所にひょっこり顔を出した。
これまでもたまにこういう事はあったけれど、予告無く姿を見せた彼に、少しだけ動揺した。
「和希も、お疲れ。
そろそろ切り上げて、帰ろうと思ってたとこ」
すると和希はニッと笑ってネクタイを緩め、俺の隣の席に当たり前みたいに腰を下ろした。
「そっか。
ならこれから一緒に、飯でも食いに行かない?
俺もう、腹ペコでさぁ」
コイツが現れた時から、たぶん誘われるだろうとは思っていた。
実際俺も空腹だったし、コンビニで買った出来合いの弁当を一人で食うのはちょっと味気ないなと思っていたところだった。
だから素直に彼の提案に乗る事にして、データを保存しパソコンの電源をオフにした。
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