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俺が望むコト②

 翔真は今でもやっぱり、和希の事が好きなんだろうな。  いつもは飄々としている癖に、こんな風に感情を隠そうともせず、苛立ちだとか怒りだとかを剥き出しにしている和希の心もまた、きっと彼に囚われたまま......。  そこまで考えて、胃がキリキリと痛んだ。  そしてこの時になり、馬鹿な俺はようやく気付いた。  ......俺ってば翔真だけじゃなく、和希の事も今もこんなに好きだったんだ。  だけど今さら気付いたところで、たぶんもう遅い。  二人はお互いを、今でも求めあっているんだから。  和希の手を握り、ゆったりと緩慢な動きで立ち上がると、翔真が柔らかな笑顔で告げた。 「分かりました。翠さん、またね」  またね、と言われたけれど、次なんて本当にあるんだろうか?  もし俺が思うように、ふたりがまだ両想いで。  ......焼け木杭に火が着いた、なんて事になったら、俺はどうなるんだ?  嫉妬と、怒りと、哀しみと......。  様々な感情が混じり合い、それはまるで汚染されたヘドロみたいに心の中に溜まっていく。  すると翔真は和希から手を離し、俺の側に駆け寄ると、強く抱き寄せた。 「ホント、可愛いなぁ。  大丈夫ですよ、翠さん。  僕も和希さんも、あなたの事が大好きですから」  これまで一度だって、行為の最中以外そんな風に抱き締める事なんか無かったのに。  ......このタイミングで、それをやんのかよ。    苛立ち、俺が翔真の体を突き飛ばすより早く。  ......和希が彼の着ていたダウンジャケットのフード部分を掴み、二人を無理矢理引き離した。 「間違えてはないけど、俺の気持ちまで勝手に代弁してんじゃねぇよ!  行くぞ、翔真。翠......また、連絡する」  そう言って和希は、翔真の事を引き摺るみたいにしてドアを開けた。  そんな二人の後ろ姿を見送りながら、俺は自分が思う以上に彼らの事が好きで、大切だったんだと知った。

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