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俺が望むコト④
すると和希は溜め息を吐き、またしても翔真のフードを引いて俺達を引き離してから、渋々といった感じで口を開いた。
「おはよう、翠。朝早くから、ホントごめん。
......あとコイツ、お前に気に入られたくて猫を被ってたみたいだけど、こっちが素だから」
予想外過ぎる言葉に、また戸惑った。
すると翔真は唇を尖らせて、不満顔で告げた。
「猫を被るって......ちょっと人聞き、悪 ない?
ええなって思うタイプの人を前にしたら、そりゃ多少はええ格好したいやん」
この表情は、見た事がある。
なるほどな。......こっちがこの男の素の姿だと言うならば、これまで感じていた違和感にも納得がいく気がした。
でも彼の18歳という年齢を考えたら、年相応と言えなくもない。
「ええなって、思うタイプって。
俺の事、利用しようとしただけなんじゃないのかよ?」
色々と馬鹿らしくなり、思っていた事をそのままぶちまけ、言葉に変えた。
すると翔真はちょっと困ったように微笑み、今度は標準語で答えた。
「それは、無いです。
だって僕、和希さんとの関係に気が付く前から、あなたに惹かれてましたから」
それから彼は、じゃないとよく知らない先輩のお兄さんの家になんか遊びに行きませんしねと付け足した。
「うん。そこに関してはたぶん、本当だと思うぞ。
昨日散々カマかけてみたけど、怪しい点は無さそうだったしな」
苦虫を噛み潰したような顔で、和希が言った。
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