70 / 90

彼らが望むコト①

「......付き合う事に、したんじゃねぇの?」  言い争っているというよりは、もはやじゃれ合っているようにしか見えない。  そんな二人を前にして、困惑しながらもずっと疑問に思っていた事を言葉にした。 「うん、そのつもり」  悪びれる様子もなく、さらりと翔真が答えた。 「だろうな、そうなると思ったわ。  末永く、お幸せに」  にっこりと微笑んで答え、ドアを閉めようとした。  すると翔真が反対側からドアノブを引っ張り、和希はわずかに空いていた隙間に靴の先端を突っ込んで阻止してきた。 「翠さん、待ってや!  ......ホンマ、せっかちな人やなぁ」  翔真が不満顔で、ブーブーと文句を垂れた。  でもこれ以上いちゃつく姿を目にしたら、年甲斐もなく泣いてしまいそうだった。  だからさっさとコイツらを追い返して、再びベッドでひとり不貞寝をしたかった。  ......今日が土曜で、本当に良かった。 「翠はさぁ、翔真の事が好きなんだよな?」  和希が、当たり前みたいに聞いた。  だけどそれに素直に答えるのは癪に障ったから、また笑顔で答えてやった。 「過去形な。......好きだった(・・・・・)よ」  本当は今も、大好きだけど。  すると和希はプッと笑い、翔真の肩をぽんと叩いた。 「......どんまい、翔真」  意地悪く、和希の口角が上がった。  すると翔真はムッとした感じで唇を再び尖らせて、俺の頬に両手を添えた。 「ホンマに、過去形?  ......僕の事、もう好きじゃないん?」  じっと顔を覗き込み、聞かれた。  彼が触れたところが、一瞬のうちに熱を持つ。......こんなの、ずるい。  すると和希は彼の手を掴んで俺から離させ、呆れたように言った。 「あざといんだよ、翔真は!  ......コイツ平気で禁じ手使ってくるから、翠はマジで気を付けて」

ともだちにシェアしよう!