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彼らが望むコト②
「......和希さんは、僕の事をナチュラルに貶めようとするよね。
でもじゃあ、聞くけど。
......翠さんは、和希さんの事は好きなん?」
まだ拗ねたような口調で、翔真が俺の目をじっと見つめたまま聞いた。
翔真が好きだというのは、和希には話した事があった。
だから過去形という事にはしたけれど、すんなり答える事が出来た。
だけど和希に関しては、これまでただのセフレとして接してきた。
バレバレだったとは思うけれど、こんな気持ち、やっぱり口にしたくない。
......俺は和希にとっても、翔真にとっても、一番大切な存在の代用品に過ぎなかったのだから。
ますます気分が沈み、うつむくと、和希は俺の体を強く抱き締めた。
「俺は翠が、好きだよ。
だから翠......お前もちゃんと、答えて」
今度は翔真が和希の体に手を伸ばし、俺達を引っ剥がそうとした。
だけど和希が馬鹿力を発揮したせいで、それは叶わなかった。
すると翔真は無理矢理間に割って入り、ボソッと呟いた。
「......ここ、まだ外やねんけど」
その言葉で我に返り、二人の体をドンと突き飛ばした。
***
押し問答の末、結局根負けして二人を部屋に招き入れた。
「お前らホント、どういうつもりだよ?
......ちゃんとまた付き合う事にしたなら、俺はもういらないじゃん」
そう言葉にした瞬間、これまで我慢していた涙がついに溢れ出してしまった。
こんな風に泣いてしまったら、彼らを困らせるだけだというのに。
なのにそれを見て翔真は穏やかな微笑みを浮かべ、俺の髪にそっと触れた。
「いらんワケ、ないやん。
僕は和希さんの事も、翠さんの事も好き。
和希さんも、僕と翠さんの両方が好き。
......あとは翠さんの、気持ち次第やと思うけど?」
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