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彼らが望むコト③

 その言葉に驚き、和希の事を見上げた。  すると和希はまた俺の頭をワシワシと撫で、ちょっと困り顔ではあったけれど微笑み頷いてくれた。  和希に告白されてから、返事をずっと先延ばしにしてきた理由。  今はもう好きじゃないだとか、これまでされた事を許せないだとか。  ......そんなの本当は全部、言い訳に過ぎなかった。  単に俺は、選べなかったのだ。  ......翔真と和希、そのどちらか一方だけなんて。  だから本心に気付かないふりをして、返事は急がないという和希の言葉に甘えた。  そして俺の大好きな翔真と和希、このふたりが両想いだったのだと知り、ようやく自分の本心が分かった。  でももしもどちらか一方ではなく、ふたりを望んで良いのであれば。  ......モラルに反する話ではあるけれど、その答えなんて決まっている。 「......俺割と執念深いし、執着もすげぇよ?」  目元に溢れた涙を和希が舌先で拭い、反対の頬に翔真が口付けた。 「それは、僕もやし。  二人ともこれからは、他の男に手ぇ出すん禁止やからね?」  翔真はクスクスと笑いながら、俺達に抱き付いた。  本当に見事なまでに、上手に猫を被っていたものだと呆れてしまう。  ......こいつキャラ、変わり過ぎだろ。  だけど結局俺が好きだったのは、隠しきれずに時々覗いてしまっていた素の翔真の方だったのかも知れない。  だってこんな風にあざと可愛い彼の事を、素直に愛しいと思えているから。    和希は翔真に抱き締められたままふんと鼻で嗤い、呆れ口調で告げた。 「そっくりそのまま、その言葉熨斗をつけて返すわ。  翔真。......お前が一番、信用ならないんだよ!」

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