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俺達が選んだ結末④

 たちの悪い悪戯には腹が立ったが、その言葉に心がほっこり暖かくなった。  ......ホントこの男には、敵わない。 「まんまとお前の望み、叶えちゃったな」  クククと笑い、彼の頭をワシワシと撫でた。  すると翔真はほっぺたをぷぅと膨らませ、プイと顔をそらせた。 「そういう時は普通、僕に大好きとかなんとか言うもんちゃうん?  ......僕はまだ一回も、ちゃんと言われてへん」  確かに言われてみたら、その通りかもしれない。  なんとなく気恥ずかしくて、どうせ伝わっているのだから良いだろうと考え、まだ一度も彼らに対して口にした事の無かった言葉。 「参った、降参。  ......翔真、大好きだよ」    俺よりも背の高い、彼の体を強く抱き寄せた。  すると普段は大人びている彼の表情が一気に綻び、幼い子供みたいに可愛らしい笑顔に変わった。  ......これは俺らの前でしか見せない、素の彼の姿。  そのタイミングで和希が、浴室から戻ってきた。  そしてこっそり一連のやり取りを見ていたのか、彼は不満顔で告げた。 「翔真。......抜け駆けは禁止って、約束したよな?」  仏頂面のまま、彼の顔を睨み付ける和希。  すると翔真はニヤリと笑い、しれっと答えた。 「......それは約束しかねるって、僕は答えたはずやけど?」  仲が良いのか、悪いのか。  ギャーギャーと騒ぎ、喧嘩する二人のこんなやり取りも、すっかり日常の一部となった。 「ほら、二人とも喧嘩すんなって!  ......和希。和希の事も俺、大好きだから」    その言葉で気が晴れたのか、嬉しそうに笑う和希。  ......ホントコイツも、大概大人げない。  だけど......。  彼らを愛し、愛される日々がこれからも、永遠に続きますように。  一人こっそり、心の中で。  ......これまでその存在を信じてすらいなかった神様に、祈りを捧げた。 【......fin】    

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