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【SS】Immoral Love~side和希~③
「キスマークを、見た時かな。
カズキって名前で、ゲイで、しかも職場までドンピシャやと、ほぼ確定かなと」
「それを見て、手を引こうとは思わなかったワケ?」
コイツの道徳観が、信じられなかった。
だけど翔真はキョトンとした感じで首をかしげ、質問に質問を返した。
「......なんで、僕が?」
「なんで、って......。
どう考えても、おかしいだろ!」
つい声を荒げてしまったけれど、彼はやっぱりただ不思議そうに俺を見つめるだけだった。
「......もう、いい。
お前と話しても時間の無駄だって、思い出した」
その言葉を聞き、彼は少し慌てたように立ち上がった。
そして翔真は、真剣な表情で告げた。
「むしろ僕は、嬉しかったよ。
大好きな和希さんと、翠さんの体を通してまた繋がれてるみたいな気がして」
その言葉に驚き、彼の顔を凝視した。
すると彼は恍惚とした表情で、思わぬ事を言い始めた。
「和希さんがつけたキスマークの上にわざと痕を残してたん、気付いてた?
あれね、間接的にとはいえ、和希さんとまたキスが出来たみたいで嬉しかった」
......やっぱりコイツ、いかれてやがる。
「本気で、キモいんだけど。
......引くわ、マジで」
嫌悪感を覚え、吐き捨てるように言った。
すると翔真は、嬉しそうににこっと笑った。
「そんな風に和希さんに言われたら、興奮する。
......やっぱ、好きやなぁ」
好きとか言われても、迷惑でしかない。
だからこんな事を言うべきではないと思うのに、喜ばせるだけかも知れないと気付きながらも彼を罵倒してしまったとしても仕方のない事と言えよう。
「黙れ、このド変態!
いまさら好きとか、言われても。
......俺はもう翠の事を裏切るつもり、これっぽっちも無いから」
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