86 / 90

【SS】Immoral Love~side和希~④

「アハハ、やっぱり真面目やなぁ。  でも翠さんの事を裏切らんのと、傷付けへんの......どっちの方が大事なんやろね?」  挑発するように、言われた言葉。  自然と眉間に、深いシワが寄るのを感じた。 「......どういう事だよ?」  意味が分からず、聞いた。  すると翔真は俺の首元に手を回し、クスクスと笑いながら答えた。 「だって翠さん、たぶんやけど僕の事好きやで?」  全部分かった上で、俺も翠も翔真の手のひらの上で、転がされていただけって事か。  ......コイツやっぱり、全く信用ならない。 「だとしても俺は、翠を捨てるような真似絶対にしないから」  再び睨み付け、告げた。  それを聞いた翔真は少し寂しそうに笑い、うつむいた。 「翠さんはホンマに、和希さんに愛されてるんやね。  ......僕の事はあんな風に、簡単に捨てた癖に」  責めるような、口調。  嘘を吐き、裏切ったのは俺ではなく、彼の方だったはずなのに。 「......簡単になんかじゃ、ない」  言い訳みたいにそう答えると、彼はまた小さく笑った。 「でも捨てた事には、変わりないやろ?」  俺だってコイツの事を、ずっと忘れられなかった。  だけど翠のお陰で、ようやく忘れられると思った。  散々傷付けてきたせいで、翠はもう俺の事なんて好きじゃない。  むしろ今なんて、憎まれているかも知れないくらいだ。  それでも絶対にもう一度振り向かせてやると、つい一時間ほど前までは意気込んでいたはずなのに。  ......こんな最悪なタイミングで、またこの男に再会することになるだなんて。

ともだちにシェアしよう!