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03. ◆ボクらと先生

 理科室へ入り、それぞれ班を作って席に着く。  竜たちは同じテーブルに囲んで座り、既に準備されていた器具をいじる。 「ナオ、勝手に触るな」 「なぁなぁ、アルコールランプって中身アルコールなんだよな?」 「そりゃあ……」 「じゃあ、飲めるの?」 「…………」  素直の真面目な声色に、竜は思わず顔を歪めた。 「そうだよ、ナオくん。でもアルコール度数高すぎて飲んだら口から火を吐くよ」 「うそ!? マジかよ!」 「ほら、サーカスとかで火吹いてるでしょ」 「うわぁーすっげぇー」  斗望の悪ノリに、素直は何も疑わず感心していた。  呆れてものも言えない。竜がため息をつくと、教壇の方から「バンっ!」と大きな音がした。 「……騒がしいぞ」  白衣を身につけた男性が、こちらに氷のように冷たい視線を向けている。  理科を担当する教師、室沢凪沙《ムロサワナギサ》。  まだ25歳と若く、外見の良さから女子からの人気は高い。しかし寡黙で常に無表情なため、気軽に話しかける生徒はほぼいない。  そして怒らせなくても怖い、と皆に言われている。  凪沙に睨まれた素直は、今にも泣き出しそうな顔をしながらすみませんと小さな声で謝った。 「こ、こわい……」 「ナオくん、怒られてやーんの」 「怒られたのはお前もだろ!?」  コソコソと話す二人に、竜は何度目か分からないため息を吐く。 「てゆうか、お前らは先生のこと怖くないのかよ」 「別に……」 「俺も平気だけど? ナオくんがビビりすぎなんだよ」 「いや、絶対にお前らの方がおかしい。室沢先生のこと怖がってないの、絶対にお前らだけだから」 「えー。でもナオくん、リュウくんのことは平気でしょ?」 「は? リュウと先生は関係ないだろ」 「でも、無表情なところとか口数少ないところとか似てるじゃん」  斗望の言葉に、素直は竜と凪沙の二人を見比べた。  確かに二人の共通点は多いかもしれない。だが素直には二人が似てるという意見には納得いかないようだった。 「似てる、か? 俺、リュウのこと怖いと思ったことないし」 「俺も別に最初からそんなこと思ってなかったけど、噂話は聞いたよ? クラスでもリュウくんに話しかける人ほぼいないし」 「それなー。リュウとちゃんと話せばあんな噂、すぐに嘘だって分かるのに」  口を尖らせる素直に、竜はノートで軽く頭を小突く。 「無駄話してるとまた怒られるぞ」 「はっ! そうだった!」  慌てて口を抑える素直に、斗望は声を出さずに肩を震わせて笑った。 「本当に怖いんだね、ナオくん」 「当たり前だ!」 「怖がることないよ。別にさっきのも本気で怒ってないし」 「なんで分かるんだよ?」 「んー? そうだね、なんとなく?」  含みのある言い方をする斗望に、素直は首を傾げた。  それから三人は大人しく授業を受け、特に素直は怒られないように静かにしていた。 「……ナオ。一応言っておくけど、アルコールランプの燃料は飲むなよ」 「ん? お、おう」

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