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第2話

園芸部に入部してから、あっという間に二ヶ月が過ぎようとしている。 水遣りや手入れの仕方を教えてもらっているうちに、花の名前もたくさん覚えた。 上手くやっていけるか不安に思っていたことを忘れる程に、光希先輩以外の部員の先輩たちも良い人ばかりで毎日が少しずつ愉しくなっていく。 だけど、ひとつだけ気になることがあった。 あのとき言われたように前髪を短く切り、顔を隠す為にかけていた眼鏡を外してみてから、急に周囲の反応が変になったのだ。 それに加え、何処に居ても見られているような感じがして、なんだか居心地が悪い。 最初は視界が良くなったせいだと思っていたけれど、どうやらそれも違うようで。 そのことを相談すると、先輩は何故か吹き出すように笑い出した。 「1年生に美少年が居るって話題になってるよ。」 「美少年、ですか..?そんな人が居るなんて知らなかったです。」 「そうじゃなくて!綴くんのこと!」 「な、なんで..僕..そんな..」 予想外の答えに困惑する僕の頭をくしゃりと撫で、やっぱりこっちの方が似合ってるよ、と先輩は満足気な表情をした。 女みたいだと揶揄われるばかりで、褒められたことなんて一度だってなかったのに。 恥ずかしさが込み上げ、ぶわっと赤くなる頬を隠すように慌てて俯き話を逸らした。 「あ、あの..!ずっと気になってたんですけど、光希先輩は何で園芸部にしたんですか?運動部っぽいというか..」 「ん?親が植物を扱う仕事をしてて、その影響で昔から育てるのも見るのも好きだったからだよ。」 「..素敵なご両親ですね。」 「それと俺、運動音痴なんだ。あはは..」 両親の影響だと話す先輩の顔がとても誇らしげで、心から尊敬していることが伝わってくる。 家庭環境に恵まれていれば、少しはまともな人間になれていたのだろうか。 そんな今更どうしようもないことを考えて哀しい気持ちになったのも束の間で、唐突に告げられたあまりに意外な一面に思わず笑ってしまった。 すると立場が先程と逆転したかのように、今度は先輩が苦笑いを浮かべながら仄かに頬を赤らめる。 何でも格好良く器用にこなせてしまう完璧な人なんだろう、という想像とは違う可愛らしい姿に、トクリと鼓動が全身に甘く響き渡った。 そんな会話をした翌日、光希先輩の噂を耳にした。 正しくは、先輩とその恋人の噂なのだけれど。 美男美女と呼ばれ、校内で有名なカップルらしい。 ぎゅっと胸が締め付けられるような、味わったことのない感覚に戸惑う。 いつから憧れや尊敬以上の感情を抱いてしまっていたのだろう。 嗚呼、本当は初めて逢ったあの日から、僕は先輩のことが好きだったんだ。 恋心を自覚してしまった今、もうこの想いを止めることは出来なかった。

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