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第15話
15.
森本さんは戸惑った様子で、俺をじっと見てから、困ったように話し始めた。
「……無理しなくていいんだよ? 僕は、男性を恋愛対象として見てしまう人間だから……その、きみの好意は嬉しいんだけど、きっと僕はただの友達ではいられなくなってしまうと思うから……」
「今まで男の人を恋愛対象として見たことはなかったんですけど……でも、俺、森本さんが好きです」
「……佐々間くんは、同情を恋愛の感情と勘違いしてるんじゃないのかな? 落ち着いて冷静になったら、きっと分かるよ。だって、こんな……きみよりも10才も年上のおじさんなんて、好きになるわけないよ」
「俺が年下だから、馬鹿にしてますか?」
「違うよ、僕はきみを馬鹿にしたりなんかしない」
「前に、森本さん言いましたよね。尊敬するのに年齢なんか関係ないって」
「……そうだったかな」
「人を好きになるのに年齢なんか、関係ないんです」
俺はそう言って、森本さんにそっとキスをした。森本さんは、嫌がらなかった。カラン、と彼が手にしていた空き缶が地面に転がる。そして俺の背に彼の両手が回された。
「好きです、森本さん」
唇を離すと、俺は彼の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「……佐々間くん、いいの?」
森本さんは、おずおずとすごく不安そうな表情で尋ねてきた。俺は安心させるように笑みを浮かべて「いいですよ」と明るく答えた。
「本当にいいのかな?」
「本当にいいんですよ。……もう、一人で悲しむのは終わりにして下さい。これからは、俺が隣にいます。悲しかったら、俺に寄りかかって泣いて下さい。年下だけど、受け止めることぐらいは出来るつもりです」
「……佐々間くん、大人だね」
「……そうじゃないですよ。森本さんを好きだからです」
立ち上がった俺に、ブランコに座ったままの森本さんはぎゅうっと抱きついてきた。
「きみは、強いよ。僕なんかよりもずっと。……いいのかな、甘えても」
「甘えて下さい。……すごく嬉しいから」
三日月が俺たち二人を優しく照らしていた。
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