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ネコと猫_5
路地裏に入ればソイツらは既にそこで待っていた。
「これって……」
目を丸くして呟く後輩を他所に、待ちきれないと俺にすり寄ってくる。
俺はソイツを抱えあげ、蓮沼に見せるように近付けた。
「この辺、野良が多くてな。半分飼ってるようなもんだけど」
俺が言えば抱えた猫がにゃーと鳴いた。
最初こそ痩せこけた姿に同情心を擽られ、餌をやっていたら懐いてしまった。
んでもって一匹だったはずが気がつけば、二匹、三匹と増え……今ではこうして五匹の猫が集まるようになっていた。
早速持参してきたキャットフードを取り出すと、猫達は嬉しそうに食べ始める。
「本当は飼ってやりたいんだけどな、俺んとこペットダメなんだよ」
黒い一匹を撫でれば気持ちよさげに声を出す。
小さい温かな命。
思わず頬が緩んでくのが分かる。
「可愛いだろ?蓮沼、猫は好きか?」
「…………」
そんなに変な質問をしたつもりはないんだが、その返答はなかなか戻ってこない。
不思議に思って猫に送っていた視線を蓮沼へと移せば、その目はしっかりと俺を捉えていた。
あまりにも真っ直ぐな目に、一瞬俺も言葉を失う。
「……おい?」
「ああ、すみません。先輩が綺麗に笑うものですから、つい見惚れていました」
なんて恥ずかしげもなく言ってのけるコイツは、一体何人の女性を泣かせてきたんだか……。
「男の俺にそんなこと言ったって無意味だぞ」
「そんなことありません。僕は思ったことを言っただけですから。それ以外に意味なんて必要ないですよ」
ああ、コイツはもしかして、天然タラシってやつではないか?
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