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ネコと猫_6

「お前は男の敵だな」 「はい?」 「なんでもねぇよ。ほら、行くぞ」 猫達にじゃあな、と声を掛け、路地裏を後にする。 「ここの喫茶店だよ」 路地裏を出てすぐ見えてきた喫茶店の前で足を止め、扉を開いた。 個人経営の喫茶店は決して広くはない。 が、味は確かで毎日ほぼ満席だ。 マスターとは顔馴染みで店に入ると、いらっしゃいとにこやかな笑みを向けられる。 「人を連れてくるなんて珍しいね」 マスターは俺より年上で、とても朗らかな男性だ。 笑うとタレ目がさらに下がって、印象が柔らかい。童顔なせいか俺よりも若く見える。 「今年の新人なんですよ。残念ながら俺が教育係になってしまいました」 紹介すると蓮沼は軽く頭を下げた。 「へぇ、君が教育係とは……時間の流れってのは恐ろしいね」 「マスター……それどういう意味ですかね?」 「あははは、そのままの意味だよ。こちらへどうぞ」 マスターに案内されて、窓際奥の席に通される。 珈琲二つとナポリタンを頼むと、マスターは厨房へと下がっていく。 「ここのナポリタンは格別だぞ。特別教えてやるんだからな」 「はぁ……」 と気のない返事をする後輩の視線の先は厨房だ。 「…………?マスターがどうかしたか?」 「いえ、仲がよろしいんですね」 「まあ、常連だしな」 「そうですか」 聞いてきた割には興味があまり無いような返事だった。 「なんだよ、何かあるのか?」 「いいえ、何もありません。ナポリタン楽しみです」 それからまたあの貼り付けたような愛想笑いを浮かべた。 「先輩は独身でしたよね?先程仰っていましたし」 どうやら触れてほしくないのか蓮沼は話題を逸したようだった。 「まあな」 「ご結婚を考えたりしないんですか?」 「特には。相手がいないし、一人が好きだしな」 それに男が好きだから一生結婚なんて無理だ、とは口に出さなかった。 自分の性癖を会社の人間にバラす気は毛頭ない。と言うか絶対に知られたくない。

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