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ネコと猫_8

覚悟しとけ、と言ったものの……この後輩の出来の良さに泣きを見たのは俺の方で、就業時刻を迎える頃にはぐうの音も出なかった。 「今日はありがとうございました。水原先輩教え方お上手ですね」 「よく言うぜ……。全く可愛くない後輩だな」 「え?そうですか?俺は水原先輩が教育係で嬉しいですけどね」 「そーかい、そーかい。そりゃ良かったな」 適当に返してやれば、生意気な後輩からはクスクスと笑い声返ってくる。 「では、今日はこれで。お先失礼します」 「へいへい、お疲れさん」 これまた綺麗な礼をして、蓮沼は退社していった。 はぁ……と大きな溜め息が思わず溢れる。 そうして机に突っ伏して脱力していると肩を叩かれた。 重たい体を起こして振り返れば、ニコニコと微笑む上司。 「水原くん、お疲れ様。どうだったかね、初の新人教育は?」 「ええ、もうサイコーの気分ですね。明日にでも教育係を解任されたい」 本音を漏らせば大きな笑い声が聞こえてくる。 「まだ初日じゃないか」 「初日にして性格の不一致が分かりました」 俺の言葉なんか耳に届いていないようで、明日も頑張りたまえよと上司は愉快そうに退社していく。 話聞いてたのか狸じじいめ。 ぐっと体を伸ばす。 今日は一段と疲れた……。 今日こそは、ちょっと発散したいかもな。 幸い残業は必要ないし、行ってみっか。 相手は誰でもいい。最初に声かけられた奴にしようと決めて、昨日と同様にバーへと足を運んだ。 バーではいつもカウンターの端に座る。 酒も頼みやすいし、何より店全体を見渡せる。 席につくと頼まずともいつも飲んでいる酒が提供され、随分顔馴染みになってしまったもんだと自嘲した。 グラスの酒を一気に煽った時、隣から聞こえてきた声。 「こんばんは」 ああ、今夜はコイツか。と隣に視線を移して、思わず飲んだ酒を吐き出しそうになった。 「ゲホッ…ゲホッ……お、おまっ……何で!?」 「先程振りですね、先輩」 そこには先程まで会社で見てた全然懐かしくない蓮沼の顔があった。

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