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ネコと猫_9
後輩はしてやったりの顔をして楽しげに笑う。
「何処かで見たことあるなって思ってたんですよ。先輩、昨日も来てましたよね?」
と言うことはコイツは昨日もここに来ていたと言うことになる。
「なっ……おまっ…………なん……」
なんでこんなところに居るんだ?
ここはそういう奴らが集まる場所だ。
つまりこの後輩もそっちと言うわけか?
なんて疑問が次々と浮かんでくるが、そのどれも言葉にならない。
「なんでここにいるのか、ですか?愚問ですね、僕も先輩と同じ人種だからです」
それはつまり恋愛対象が男と言うこと、だよな?
イケメンなのに残念だな……ってそんなことはどうでもいい。
問題は会社の人間に俺の性癖がバレたことだ。
今の今まで上手くやって来たのになんで、よりによってこんな後輩にバレてしまうのか……。
思わず頭を抱えた。
「あれ?先輩、全然嬉しそうじゃないですね」
なんて笑う蓮沼の頭を小突いた。
まあ、冷静になってみれば状況的にはコイツも同じ立場だ。
「色々言いたいことはあるが、とりあえずここで俺に会ったことは忘れろ。そして誰にも言うな、いいな?」
「えー、どうしようかな?」
「絶対言うなよ。大体そんなこと言ったら自分の首も絞めることになるだろうが」
「別に僕は問題ありません。隠しているわけではないので。知られても何ら支障はありません」
にこやかに言い放つ後輩を少し格好良いと思ってしまったが、同時に厄介だと気付く。
詰まる所コイツには不利なものは何一つ無いと言うこと。
「で、先輩はバレたくないんですね?男が好きだって」
しまったと後悔してももう遅い。
俺は自分が不利な状況であると白状したようなもんだ。
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