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ネコと猫_10
ニヤリと笑う顔に嫌な予感しかしない。
「いいですよ、黙ってあげてても」
「…………何が望みだ」
「さすが、話が早い」
蓮沼は俺の手にあったグラスを奪い取り、それを一気に煽った。
「――今夜一晩、お相手願えますか?」
あまりにも妖艶な笑みに、危うく何も考えず頷くところだった。
「断る」
「何故?」
「お前、どう考えてもタチだろ。俺は絶対ネコはやらない。掘られるなんてごめんだね」
憤慨して言えば蓮沼はおやおやと肩を竦めた。
「そうですか?先輩、ネコの才能あると思うんですけどね」
「……やめろ。全然嬉しくない」
「まあ、そう言わずに」
と自然な動作で腰を抱かれる。
……コイツ、相当手慣れてるな。
「ああ、そうだ。僕、“ねこ”好きですよ」
「……嘘つけ」
どう考えてもタチだろ。
「本当ですよ」
「本当か?」
「はい。嘘はつきません。ね?だから今晩、お相手願えませんか?それに……先輩は断れる立場じゃないでしょう?」
腰に掛かる手に力が込められる。
確かに……状況的に不利なのは俺の方だ。
「……今晩だけだぞ」
「はい」
「絶対会社の人間には言うなよ」
「はい」
……相変わらず嘘臭い愛想笑いだな。
腰に回った手を払い除け、席を立つ。
半ばやけくそにバーでの会計を済ませ、蓮沼を連れ立ち何回か利用している近くのホテルへと入った。
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