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ネコと猫_16

その途端、蓮沼の動きが止まる。 それから手で目元を拭われ、上からは盛大な溜め息が降ってきた。 「……蓮……沼……っ?」 「…そんなに子供みたいに泣かないでください。悪いことをしている気分です」 「気分じゃなくてっ、してるだろ!」 「そうですか?でも先輩、すごく気持ちいいって顔してたから。でも、さすがにそこまで泣かれるとこれ以上は出来ませんね」 やれやれと蓮沼は自身のモノを俺の後孔から離す。 ホッと胸を撫で下ろし、身体の力が抜けた。 「でも、さすがにこのままでは終れません。先輩だってそうでしょう?」 ニヤリと笑う顔を呆けて見上げていたら、俺の昂りに蓮沼のモノが重なり合わされ、それをまとめて擦られる。 「うぁっ……やっ……何し、て……」 「挿れない代わりです。今日はこれで許してあげますよ」 何でそんな偉そうなんだ! 「だ、め……だめぇ……」 振りかぶるとまた涙が落ちた。 でもこの涙は……。 「いいですね、その泣き顔。気持ちよくて泣いているんでしょう?そう言うの可愛くて堪らない。その涙ならいくらでも見たいです」 「やだっ……見るなっ……変態……」 「変態で結構です。ねぇ、もっと乱れて……」 強く握られ、上下に大胆に扱かれる。 蓮沼のモノが脈打つのが分かって、それが更に俺を快感の中へと落としていく。 「だめ、だめだ………もう……っ」 「それじゃあ一緒に……はぁっ……」 その言葉を合図に蓮沼の手の動きが更に速まる。 正直俺の頭はもう達することでいっぱいで……必死に快感を身体で拾っていた。 「ふぁ……だ、……もうイく――ああああ!」 背も喉も仰け反って、俺は今まで無いぐらいの快感の波に抗えず、白濁とした精液を放った。 俺が出したあと、蓮沼もビクッと身体を震わせ、達したことが分かった。 快感の絶頂を終えると急激に気だるくなる。 「ふふ、先輩眠たいんですか?」 「……う、るさい」 うつらうつらとする意識の中、頭を撫でてくる温かな手を感じた。 「おやすみなさい、水原さん」 「う…………んん………」 瞼が自然と落ちていく……。 「それから、大好きですよ」 なんて言葉を聞いたような聞いてないような…。 とにかく俺の意識は既に夢の中で、次に目が覚めた時、そこに蓮沼の姿はなく、小さなメモとホテル代が置かれていた。 メモには綺麗な字で 『昨晩は淫らな姿ありがとうございました。 本当は朝まで居たかったのですが用が出来てしまいましたので、先に出ます。 ホテル代は置いておきます。遅刻しないように 気を付けてください。 それからスマホに僕の番号登録しておきましたので いつでも連絡ください。もちろん先輩のも登録しておきました。』 と綴られていた。 くしゃりとメモを握り潰し、スマホを手に取る。 電話帳を開けば登録した覚えのない“蓮沼”の文字。 あの野郎ぉ……あんだけ好き勝手しておいて、人のスマホまで……。 というかどうやってロック解除した! 「絶対仕事でシメてやる。覚えてろよ……」 なんて負け犬のような台詞を吐いている自分が情けない。 とりあえず電話帳の番号を削除して、シャワーを浴びた。 シャワーを浴びて気が付いたのは、身体が綺麗にされている事実。 それがまた俺の羞恥心を駆り立てた。 「………くそっ、やっぱ許さねぇ…」 誰に言うでもなく、その言葉はお湯と共に流れていった。

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