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感度が良いのも問題ですね_5
言葉を失っている隙に、蓮沼の手は俺の股間まで辿り着く。
おい、冗談だろ…………?
嫌な予感を覚えて蓮沼の手を止めようと、腕を伸ばし掛けた時マスターが顔を上げたのが視界に入り、慌てて姿勢を整える。
「これ、笑ってしまったお詫びに」
とマスターがカウンターに二枚のチケットを差し出した。
「これは?」
「今日お手伝いする出店の珈琲チケット。良かったら二人で遊びにおいで」
「へぇ……ありがとうございます。でも二人では絶対に行かないので俺一人で――っ!?」
「……?どうかしたの?」
カウンターのチケットに手を掛けたまま、俺の動きは止まった。マスターはそんな俺を怪訝な表情で見ている。
油断していたのが悪かった。
マスターの話に気を取られていたら、蓮沼の手が俺のモノをぐっと握り込んだ。
その刺激に思わず息を呑んでしまう。
この野郎ぉ、と隣を睨むも蓮沼は何食わぬ涼しげな顔をしているだけだ。
「大丈夫?気分でも悪い?」
マスターは心配そうな面持ちで俺を見ている。
「あ……いえ、大丈――っ」
言葉を紡がせないと言わんばかりに、蓮沼の指先が的確にモノの割れ目を刺激した。
「やっぱりどこか具合が悪いんじゃ……」
カウンター越しに伸ばされたマスターの手が頬に触れる。
「――んっ……」
「ぇ………」
しまったと口を押さえたときにはもう遅い。
思わず出てしまった声にマスターは驚いたように目を開き、触れていた手も引いていく。
「えっと……」
マスターは気まずそうに言葉を探している。
くっそ…………!
この変態野郎が……!
ともう一度隣を睨むと、蓮沼は先程とは違う視線をこちらに向けていた。
冷たい、怒りを秘めたようなその目に、ゾクリと何かが背中を駆け抜けた。
な、何んだよ、その目……どう考えても怒るのは俺の方だろうが!
なんて俺の心境を知ってか知らずか、蓮沼はふいっと視線を外し、あの貼り付けたような笑顔をマスターへと向ける。
「どうやら先輩の体調が優れないようなので、会社に戻って医務室へ連れていきます。ご馳走さまでした、それからチケットありがとうございます。二人で使わせていただきますね」
やたら“二人”を強調したのは気のせいであってほしい。
言うな否やカウンターへ金を置いて、俺の手を引きながら後輩は店を出る。
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