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感度が良いのも問題ですね_10
下着屋に入り、またしても選ぶ権利のなかった俺は手渡されたものを持って試着室へ。
例のごとく出る頃には会計が済まされていた。
「おい、俺は別に女じゃねぇし、ましてやお前より年上だ。奢ってもらう謂れはない。払わせろ」
「良いじゃないですか、僕の自己満足ですから」
前を行く後輩はご機嫌だ。鼻歌まで歌ってやがる。
「そうだ、きっきお店の人に訊いたんですが今日のお祭りは花火が上がるらしいですよ。一緒に見ましょう」
「………何が悲しくてお前と二人で花火なんぞ見なきゃならないんだ」
「だって僕が見たいんです」
「知るかっ!」
「いいんですか?そんなこと言うと明日会社中に――」
「ああ!もう!分かったよ!この脅迫魔!」
クソッ…………いつまで続くんだこの脅迫は。
早いとこコイツの弱味も掴まねーと……。
考え込む俺の前からクスクスと笑い声が聞こえる。
「な、何だよ?何笑ってんだ?」
「ああ、いややっぱり僕は先輩のこと好きだなって」
「……はぁ!?意味わからん。何でそんな話の流れになるんだ?」
「僕の弱点見つけられるといいですね」
「………へ?……え!?」
俺の心を見透かした言葉に動揺した。
い、今口に出してたか?
いやそんなはず……。
「顔に書いてましたよ。先輩って本当に分かりやすいですよね。見ていて飽きません」
「………ああ、そうかよ。良かったな」
「怒らないでください。ちゃんと綿菓子買ってあげますから。ね?」
だーれが綿菓子買われたぐらいで機嫌直すかってんだ。ガキじゃあるまいし……。
「デートに夏祭りって素敵なシチュエーションですよね」
…………デート?
「……お前は本物の馬鹿なの?」
「何か変なこと言いましたか?」
「……もういい。突っ込む気にもならん」
そうだ。
大体にして馬鹿相手に、まともに取り繕おうとした俺が馬鹿だったんだ。
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