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感度が良いのも問題ですね_13

音にして五回。 確かに音は鳴ったのだが、弾の姿がさっぱり見えなかった。 「……一応訊くがあの的狙ったんだよな?」 「……はい」 「……あの猫のやつでいいんだよな?」 「……はい」 「……お前経験がないから自信がないんじゃなくて、苦手で自信がなかったんだな?」 「………………」 射的を百発百中当てるのは難しい。 それにしてもだ。 全くもって全然惜しくとないとはどういうことだ? 何をどう狙ったらあんな的外れな方向に飛んでいくんだ……。 「ぶっ、ははははっ、お前、下手にもほどがあるだろ」 「……………………」 いつも余裕そうな顔をして、どこか涼しげな野郎の顔が歪むのは実に気分がいい。 「笑いすぎです。だから先に謝ったじゃないですか」 「くっ、ははははは、いや、金はいいけどよ。お前にも出来ないことあるんだな。初めて可愛く見えたわ」 「……うるさいですよ」 よっぽど馬鹿にされていることが不服なようで、むすっとした表情だ。 「もういいでしょう。行きますよ」 「あー、待て待て。おやっさん、もう一回やらして」 立ち退こうとする蓮沼を引き止めて、もう五発分の弾を受け取る。 「ん、もう一回やってみろよ」 「……まだ馬鹿にし足りないんですか?」 「違ぇよ。ほら、構えてみろ」 嫌々する後輩に無理やり構えさせ、それに手を添える。 「左目を瞑って右目で的を見ろ」 「…………」 「的の中心より少し左側に標準が合うようにして……よし、撃て!」 指示と同時に放った弾は的にヒットした。 倒れはしなかったものの、上出来だ。 「ほらな、簡単だろ?逆にあんなに外す方が難しいっての」 「………凄い。初めて当たった」 どうやらお気に召したらしい。 「もう一回やってもいいですか?」 「どーぞ。お気の済むまで」 あーあ、こりゃ取るまで終わらねーな。

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