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感度が良いのも問題ですね_15
しかもこの骨ばったゴツゴツした感触は間違いなく男の手だ。
おいおいおい、冗談だろ?
これってよくある、いやよくあっちゃマズい痴漢ってやつじゃねーか?
人が多く振り向くことも出来ないから顔は確認出来ない。
撫でるような動き、それから感触を楽しむように揉むような動きをする。
ぞわぞわと走る悪寒が止まない。
気持ち悪ーぃな……。
大声出しても混乱招くだけだしな……少し我慢して人波の中に消えるしかないか。
仕方なく堪えようと素知らぬ振りをして歩き続ける。
ったくこんな男の尻なんて触って何が楽しいんだか……。
もっと可愛い浴衣美人がいるだろうに。
自然と溜め息が漏れる。
その息が詰まってしまったのは尻を撫でていた手が、縦の割れ目をなぞるように指を這わせてきたからだ。
「なっ――!?んっ……」
「――あはっ、思ったより可愛い声だぁ!」
耳元で聞こえてきた痴漢野郎の声は予想を裏切って若々しい。
「てめえ――!」
「シーっ、こんなところで大声出すと大混乱招いちゃうよ?」
「んなもん、知るか!」
と無理矢理振り向こうとした身体は、物凄い力で押さえ込まれ敵わない。
「うん、それは予想通りの反応!」
「っ……気持ち悪いんだよ、俺は男だ!」
「そんなこと知ってるよ?そんなに馬鹿じゃないし。ねぇ、それより人の少ないところに移動しようよ?もっと顔みたいなぁ」
痴漢野郎の手が俺を押さえ込んだまま、促すように身体を撫で回される。
人の少ないところ?上等じゃねえか。
返り討ちにしてやる。
「ほら、あっちの木陰なんかいいんじゃない?」
身体を這う手に気持ち悪さを感じつつも示された方へ足を向けた。
木陰へと足を踏み入れた瞬間、視界がぐるりと反転した。ドンッと衝撃が背中に走り、木に押し付けられたのだと悟る。
「痛っ…………」
「ふーん、苦痛に歪む顔なかなかいいね」
痛みに閉じてしまった瞼を開くと、そこには俺より少し背が高いぐらいの若い青年が立っていた。
鼻筋の通った整った顔立ちと明るい髪色が目を引く。
モデルだと言われても何ら疑いはなく信じてしまうだろう。
だが騙されない。
どんな容姿をしていようとコイツは男を痴漢する変態野郎だ。
「ねえ、もっと色んな顔見せて?」
「はっ、ふざけんな!気持ち悪いんだよ!」
「なかなか強気だね。そんなところが魅力なのかな?」
痴漢野郎はニコニコと微笑みながら少しずつ間合いを詰めてくる。
「ち、近寄んな!」
「もしかして怯えてる?」
まるで玩具を買い与えられた子供のように男は楽しそうに見えた。
全身でコイツはヤバイと察し、逃げようとした瞬間腕を捕らわれる。振り解こうにも力が強くて全く緩まない。
「くそっ……」
「あはは、返り討ちにしてやろうとか考えてたでしょ?甘いなぁ」
「離せよ!」
「いいよ、その身体試させてくれるなら」
ペロリと唇を舐める仕草は妖しくも色気を放つ。
……でも、何だ……この違和感。
「そんな無防備に見つめちゃダメだよ?」
……何なんだ?初めて会ったはずなのに、どうして俺は――この雰囲気を知っているんだ………?
「――狙われた獲物は、一瞬の隙も見せてはいけないんだから」
痴漢野郎の手は俺の顎を捕らえ、視界が陰った。
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