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感度が良いのも問題ですね_18
美形が二人揃うと人は道を開けてくれるらしい。
腕を組んで前を歩く二人に周囲は熱い視線を送っている。女性は頬を染め、男までもが興味を惹かれているようだ。
まあ、当人たちは全く気にした様子はないんだがな……。
「あ!焼きそばあったよ!」
はしゃぐ祥葉と腕を引っ張られ引き摺られていく後輩。
俺はと言えば一歩下がった位置から二人の背中を見つめているわけで。
……帰りてーな。
一体何やってんだか。
周りにはお祭りを楽しむ子供やカップルばかりだ。
ふと横を通りすぎた青年。
とても可愛らしい容姿をしていた。
うん、やっぱりああいうタイプがいいな。
「――先輩、聞いてますか?」
突然耳に届いた言葉に視線を前に戻せば、後輩が怪訝な顔つきで俺を見ていた。
「え、あ、何だっけ?」
「ですから、もうはぐれないで下さいねって言ったんですよ。またはぐれたら問答無用で手繋ぎますからね」
「……それだけは勘弁だな」
「だったらボーッとしないで、ちゃんとついてきてください。あ、焼きそば食べます?」
「………食う」
分かりました、と後輩は屋台の方へ足を向ける。
残されたのは俺と兄の祥葉。
じーっと刺さる視線が痛い。
「な、んだよ……?」
「うーん、やっぱどう見ても俺の方がビジュアル的に勝ってない?」
ビジュアル的に勝ってるだ?
んなことわざわざ言われんでも分かってるわ!
つーか、お前に勝てるとか相当なレベルだぞ!
「何で祥元はこんなのが良いのかなぁ?」
この野郎ぉ………いちいちムカつくな……。
だが俺も大人だ。冷静に、冷静に。
「ただのおっさんだしさ」
理性的に、紳士的に。
「あーあ、だめ。全然良さが分からない。というか空気読んでよね、俺は祥元と二人で楽しみたいんだけど」
俺は大人なんだ。だから……。
「おっさん、ただの邪魔者だから。じゃ・ま・も・の」
瞬間、ブチッと音がして頭の中で何かが切れた。
ちょうどそこへ後輩が焼きそば三つを手にして戻ってくる。
「お待たせしました、どうぞ」
差し出された焼きそばが一つ。
俺は伸ばした手で思いっきりそれを振り払う。
後輩の手から滑り落ちたそれは見るも無惨に地面へと散らばった。
「あーあ、ダメじゃん。食べ物粗末にしちゃ」
なんて祥葉から発せられた暢気な声が更に俺を苛立たせる。
ダメだと頭では分かっているのに、身体が、口が止まらない。
「――……るせーんだよ」
「……先輩?」
「何なんだよ、お前らは!人の事馬鹿にしやがって。年上からかってそんなに楽しいか!?」
「先輩、落ち着いてくださ――」
「もうほっとけよ!二人で仲良くやってりゃいいだろうが!俺を巻き込むなよ!」
「…………………」
周りの人間が何事かと視線を向け始めている。
そんな中後輩は何も言わず、地面に散らばった焼きそばを元のパックへと詰め直し始めた。
「ちょっと祥元、何してるの?」
後輩の行動に祥葉も首を捻る。
「……地面に触れていない所ならまだ食べられますから」
「え!?本気で言ってるの?」
「本気ですよ。兄さんと先輩はこちらをどうぞ、これは僕が食べますので」
と祥葉に一つを手渡し、もう一つをもう一度俺へと差し出してくる。
「先輩?」
「………帰る!」
俺は受け取ることはせず、その場から逃げ出すように走った。
引き留める声が聞こえたような気がしたが、今の俺にはどうでも良いことだった。
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