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釣った魚に餌はやらない_7

地球が回ってる……ってそりゃ当然か。 「大丈夫かい?」 背中を擦ってくれる部長の手にさえ吐き気を催す。 結局次々とワイングラスを空けた俺は悪酔いをして、店を出る頃には足元さえ覚束ない始末。 店を出てすぐの壁に額をのめり込ませて回る足元を見つめていた。 あー……回る……回ってるよ、地球。 「まだ店の方で少し休ませてもらおうか?」 「あー……大丈夫れす……はい……帰れます……」 「呂律も怪しいよ。せめてタクシーを拾おう、ね?」 確かに歩きたくない……。 タクシーと言う単語に二回頷く。 「水原くんはあまりお酒飲まないのかな?自分の限界は知っておかないと後々取り返しのつかないことになるよ」 そんな事ない。 俺だって自分の限界ぐらいは把握している。 ただ……ただ今日は……。 「……ってアイツのせいら……」 「ん?」 「アイツが……蓮沼がいちいち頭に浮かんでくるから……」 折角離れたのに、何だってこんなにも俺の思考を占領するんだ。 「ぜんぶアイツの……」 「はいはい、落ち着いて。本当羨ましいぐらい仲がいいね、君達は」 「違っ……」 「でもちょっと妬けちゃうな」 「ぇ……」 回る足元を見つめていた視界が陰り、伸びてきた手が俺の顎を掴むとグイッと上を向かされる。 「今目の前に私がいるのに、君の目には映らないのかな?」 いつも穏やかな雰囲気を纏っているから気付かなかったが、顔が整っている分、高圧的な態度を取られると怖く思う。 「な、に……」 「寂しいなら慰めてあげようか?」 「……は?何言って…………?」 頭がぐらぐらする。 またからかっているんだろうか……。 「知っているよ、君は男が好きなんだろう?性的な意味で」 まるで冷水を頭から被ったように急に視界がクリアになる。 映り込んでくる笑みは、俺の足を竦ませるには十分なほど威圧を放っていた。

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