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釣った魚に餌はやらない_21

……なんて言えるわけねぇだろ! 「ねえ、教えて?」 「し、知らねぇよ、馬鹿!」 「嘘。ご自分のことでしょう?それとも何か言えない訳でも?」 ん?と目を覗かれてぐっと押し黙る。 言えるわけがない。 こんなのまるで俺が蓮沼を好きだと言ってるみたいだろ……。 「分からないなら分かるまで続けましょうか?」 もう一度下の方へと顔を埋めようとした蓮沼の髪を掴む。 「や、やめろ!」 「痛いですよ。止めてほしいなら何が怖いのか言ってください」 ゆっくりと指を外されて手を絡み取られる。 「…………こ、怖いに決まってんだろ……」 絞り出した声は思いの外震えてしまった。 「……ずっと、ずっと抱く側だったんだ。こんな急に……」 「……受け入れるのが怖い?」 図星をつかれ下唇を噛み締めると、蓮沼は笑って掴んでいた手の指を絡ませ合わせてくる。 それからコツンと額同士がぶつかった。 「先輩、可愛い」 「は!?な、何言って……」 「だって逃げてもいいって言ったのに、僕のこと受け入れようとしてくれたんでしょう?」 「それは……」 「可愛い」 ゆっくりと唇が近付いてくる。 「舌、出して」 触れる寸前、目を覗く蓮沼は言った。 「舌……」 「怖いことしないから、舌出して」 囁くような声にゾクゾクと背中に何かが伝わる。 薄く開いた唇から少しだけ舌を覗かせてみた。 「ふっ、ふふ、可愛い」 舌先同士が擦り合わさると猫に舐められているようで擽ったい。 「はすぬ……っ……くすぐっ…た……」 「逃げないでください。もっと出して」 俺よりコイツの方がよっぽど猫みたいだ……。 ぺろぺろと懸命に舐めてくるから、何だか可愛く思えて俺も少しだけ舐め返してみた。 「――!」 予想外の動きだったのか蓮沼は一瞬舌を引いた。 あ……何か嬉しい、かも……。

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