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釣った魚に餌はやらない_26
蓮沼は笑ったままサイドボードからティッシュを手に取ると、自身の手と俺の腹部に付着した精液を丁寧に拭き上げていく。
「拭き残しありませんか?」
「え……あ、大丈夫」
「疲れたでしょう?このまま朝まで少し眠りましょう。シャワーは朝でも良いですか?」
手際よく後処理を済ませていく蓮沼をボーッと目で追うことしか出来なかった俺は、ああ、と情けない返事をするだけだった。
「さて、それじゃあ寝ましょうか」
当然のように俺の身体を抱きながらベッドへ潜り込もうとするものだから、慌てて胸を突き返す。
「な、何で一緒に寝るんだよ!」
「だってベッド一つしかないですし、僕ソファーは嫌ですよ。ましてや先輩をソファーに寝かせるのも嫌です」
なのでこれが最善策かと、そう言いながら再び背中に腕が回され、ベッドの中へと引きずり込まれていく。
「お、おい!」
「今度は何ですか?また兄さんに壁ドンされますよ」
壁ドンって使い方違うだろ、俺でも分かるぞ。って違う、そうじゃない。
「……お前は、いいのかよ?」
「何がです?」
「だから、その、当たってるやつ……」
抱き寄せられると嫌でも密着するんだ。
主張してる昂りぐらいすぐ分かる。
「ああ、良いんですよ」
「けど……」
「ん?そんなに欲しかったんですか、これ」
「ばっ……違っ……そうじゃない!そ、そこまでなってたら辛いだろ……男なんだからそのぐらい分かる」
俺にだって張り詰めた熱を持つ昂りがかなり我慢しているってことぐらい分かる。
「大丈夫ですよ。それにここじゃあ先輩の可愛い声聴けませんから。初めては沢山喘ぎ声が聴きたいのでね」
「なっ……誰が喘ぐか!」
「あ、ツッコミどころはそこなんですね。ははっ」
「るさい!笑うな!」
「はいはい。だから今日はいいです。このまま寝ましょう。またいつだって機会はありますから」
欠伸をしてベッドに沈む蓮沼は本当に寝る気らしい………。
俺だけ二回もイかされたのに、コイツだけ一度も達してないのは些か不満だ。
「……おい、その……手でなら、抜いてやってもいい……ぞ」
胸に額を当てたままなのは恥ずかしさからだ。
「………………」
「なんだよ、手じゃ不満か?ぬ、抜いてやるって言ってんだから有り難く――……蓮沼?」
あまりの反応の無さに顔を上げる。
「…………………」
「……………寝てる」
え、早っ!さっきまで喋ってただろ!?
規則正しい寝息を立てる顔に、気恥ずかしさと苛つきが同時に襲ってきて頬を引っ張った。
が、全然起きる気配はない。
「くそ……もう絶対言わねぇ……」
ムカつくんだ。
無駄に整った顔とか、優しい声とか、抱き締めて離さない腕とか。
「……頼むから、あんまり振り回してくれるなよ」
この心臓はいつまで鳴り続ければいい……?
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