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波乱万丈なんて望んでない_3

名だたる老舗旅館なだけあって建物の風格は立派なものだ。 部屋は一部屋三人の割り当てで、俺と予想通り蓮沼、それから狸じじい。 三人では勿体無いぐらいの広い部屋だ。 「ふむふむ、なかなか良いねぇ」 ご満悦の狸じじいは早速部屋に備え付けてあった浴衣に着替えるらしい。 落ち着きのない年寄りだな、本当。 「先輩、こっち」 と窓際に立った蓮沼が手招きをする。 次の指された窓の外には何かが見えるらしい。 何だよ?と窓際に近付けば青々とした湖が見えた。 「お、すげーな」 「綺麗ですね」 「あのちらほら浮いてんのはボートか?」 「ええ、恐らく。ガイドブックにも乗れると書いてましたよ」 しっかり読んでたんだな、あれ。 「行ってみましょうか?夕食までは自由時間ですし」 「……お前と二人で?」 狸じじいはどうすんだ?と首を傾げたタイミングで浴衣姿の狸じじいが姿を見せた。 「じゃあ大浴場行ってくるから、二人とも仲良くしててね」 「え、もう行くんですか?」 「当然!温泉だよ?たーっぷり堪能しないとね」 脇に抱えていた入浴セットらしきものをドヤ顔で見せつけてくる。 「じゃあ、また後でね」 「ええ、ごゆっくり」 花が飛ぶ背中に蓮沼は笑顔で手を振る。 「他の方を誘っても良いですが、些か大所帯になるかと」 「………………………」 頭を掠めるのは蓮沼を取り囲む女性社員達だ。 確かに……悪目立ちしそうだな……。 「………二人でいい」 「嬉しい、デートですね」 「ちげーよ、馬鹿」 結局いつもこうなる。蓮沼の思い通りに。

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