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波乱万丈なんて望んでない_9

部屋に入れば宴会前には敷かれていなかった布団が準備万端と用意されていて、三組分が川の字に並んでいた。 一番手前の布団に狸じじいを転がして、次の布団には蓮沼を投げてやろうと肩に掛かった腕を外そうとした瞬間、支えていたはずの身体に抱え込まれるように強い力で引き寄せられる。 「なっ……おい!何す――」 更にグッと体重を乗せられれば、支えきれず雪崩れ込むよう布団へと倒れた。 「ってぇな、何すんだ!」 上にのし掛かる蓮沼をこれでもかと睨み付ける。 「痛くないでしょう?下は布団だし、ちゃんと腕をクッション代わりにしたんですから」 「そういう問題じゃ――って、馬鹿、やめっ」 身体を抑え込まれたまま、蓮沼の手が浴衣の合わせから中へと侵入してごそごそと弄り始める。 「おい、冗談だろ?まさか……」 「ふふ、そのまさかですね」 こ、コイツさっきまで動くことも儘ならなかったくせに……! 「やめっ、アホか!狸じじい起きたらどーすんだ!」 「大丈夫ですよ。しっかり潰してやりましたから。朝まで熟睡です」 上げた顔はニヤリと笑った。 それはそれはとても意地悪そうに。 この野郎………。 「……お前、全然酔ってねぇな?」 「あ、バレちゃいました?僕お酒強いんですよ。あの程度じゃ潰されません」 潰そうなんて百年は早いですね、なんて爽やかに笑って言うもんだから、コイツとだけは飲み比べは止めておこうと肝に命じた。 「じゃあ続けましょうか」 文句を言い掛けた口はあっさりと塞がれて、合わさった唇からは舌が侵入してくる。 「ん、んぅ〜〜……!」 意識はハッキリとしているが、飲んだ量は相当なはず。 キスからはアルコールの香りが立ち込めて、こっちが酔ってしまいそうだ。 それに、いつもより……舌、熱い……。 身体に触れてくる手も、いつもより熱い。 「ンっ…………ぁ……や…………」 「……先輩、気付いてます?」 一度離れた唇が唾液を啜り、俺に問う。 「な、に…………が……?」 「キスの仕方、変わりましたね。僕の舌を受け入れようとしてくれる」 「……は?んなわけな――」 「あるくせに。キス、好きでしょう?」

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