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波乱万丈なんて望んでない_10
熱い舌が口腔に侵入してくると、絡み取るように俺の舌を掬い上げる。
ざらついた感触が舌の裏を撫でる感覚に自然と腰が揺れた。
でもこのキス……苦しくない…………。
こんな、まるで……大切にされてるみたいな、そんなキス……。
「ぅ……ン……ぁっ……ふぅ……」
「可愛らしい人」
「も、や……なんで……」
「ん?なんです?」
「キス、いつもと違っ……」
「ああ、だってもう必要ないでしょう?呼吸なんて奪わなくても、そんなに蕩けた顔をするんですから」
頬をなぞる指先は擽ったく、身を捩る。
頭上からクスクスと笑い声が降ってきて、悔し紛れに睨み返す。
「可愛いですよ、そう言うところも」
「チッ、変態野郎……」
「何を今更」
もう一度唇を寄せてきた顔を慌てて両手で押し返す。
「も、やめろ!マジで起きたらどーすんだ!」
「だから朝までぐっすりですよ」
「わかんねぇだろ、そんな事。てか普通に考えて無理だ、無理。こんな危険犯してまでお前と乳くり合いたくねーよ!」
本当ムードがないですね、と笑いつつ俺の腕を取ると身体を起こし、そのまま立ち上がる。
「暴れないでくださいね」
「……は?」
一応の注意換気の後、伸びてきた手が俺の身体を抱えあげ、足が地面から浮き上がった。
「なっ!?おい、降ろせ!」
「もうだから暴れないでくださいよ。これでもお酒入ってるんですから危ないですよ」
「だったら降ろせ馬鹿!」
まるで俵のように担がれて足をバタつかせると、叱咤の言葉と同時に尻を叩かれ、俺の苛立ちは最高潮だ。
「ふざけんな!降ろせっつってんだろ!」
「はいはい、すぐ降ろしてあげますから。もう少し我慢してください」
今度はあやすように背中に置かれる手。
こ、子供か俺は!!
蓮沼の足取りは、部屋に備え付けてある客室露天風呂へと向かっているようだ。
「おい、嫌だぞ。俺は絶対嫌だからな!」
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