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波乱万丈なんて望んでない_19

浅い息遣いが頭上から降ってくる。 詰めた声の艶やかさに心臓が鳴った。 「はぁっ…………ふふっ、可愛い……」 慈しむような眼差しが気恥ずかしくて、根元まで無理矢理呑み込むと、蓮沼の腰が微かに揺れた。 「んっ…………!ん、ぐ…………」 「ああ、ごめんなさい。少し突いちゃいましたね」 ごめんなさい、なんて口にしながらその目には確かに欲の色が見える。 てか、こんなに脈打ってんのに何でコイツ、イかねぇんだよ!さては遅漏か? 「どうしました?そんなに睨んで」 「……ん、いへぇお(イけよ)」 「うーん……気持ちいいんですけどもう少し足りないんですよね」 足りないっつったってこれ以上どうすりゃ……。 口、もう入んねぇし……。つーか、これ以上入れたら吐くわ、マジで。 「なので擦り合いしましょう。ほら、口離してください」 一瞬言葉に従い掛けたが、ふと思い止まる。 ここで従ったら蓮沼の言った通り、俺は下手だって認めることになる。それは、何か、ムカつくだろ……。 「洸さん?」 問い掛けにキッと睨み返して、抜き掛けた昂りを喉奥まで突き入れた。 「……っ…………全く、負けず嫌いなんですから……」 「ん、んぅ…………っ……ぅ……」 こうなりゃ自棄だと嗚咽かないギリギリを狙ってがむしゃらに頭を動かした。 「……っんと、馬鹿な人ですね…………」 何時になく低い声だった。 だが、それを疑問に思う事は出来なかった。 伸びてきた手が後頭部を押さえ、息が止まるほど喉奥に突き入れられたから。 「――んぅっ……!?……ッ……ん、んぐッ……」 「すみません、少しだけ欲張らせて……」 蓮沼にしては珍しく切羽詰まった声だったように思う。 けどそんな事より……。 「んーっ!……ぐっ……ぅ……んん!」 逃げ場のなくなった俺の喉元に突き立てられる性器は、まさに凶器。 嗚咽する俺なんかお構いなしと腰を振られ、目からは生理的な涙が溢れた。 くそ……っ、めちゃくちゃやりやがって……! 噛みちぎってやりたいがそんな余裕さえない。 「あー……ふふ、喉気持ちいい……っ」 「……っ……ふぅっ……ん…ッ……」 「ここ、出しますから。上手に飲んで下さいね」 喉仏を滑り落ちていった指先に、冗談じゃないと睨んだ瞬間、埋められた昂りがドクンと脈を打った。 「〜〜っ、は……っ……」 「んぅ〜〜っ……ぅ……ん……」 熱すぎる体液が喉を焼く。 飲みたくなくてもそれは勝手に食道を通り、モノを引き抜かれた後には苦味が口に広がった。 「ゲホッ……ゲホッ……おま、ふざけんな!飲んじまっただろ!」 「僕だって飲んだんですから、おあいこです」 「自分で飲むのと飲まされんのじゃ全然違うだろうが!」 「あ、そんな勢いよく立ったら……」 水音を響かせて立ち上がった途端、蓮沼を捕らえた視界がぐにゃりと揺らぐ。 あ……これ、ヤバ…………。 落ちていく身体を感じながら、自身ではどうする事も出来ない。目を閉じる事さえも出来なくて、傾く視界をただ見つめるだけ。 その視界に割って入るように伸ばされた腕が、俺の身体を抱きとめた。 「全く危なっかしい人だ」 「……るせぇな」 「僕より人生長いんですから、いきなり立ち上がったらどうなるかぐらい考えて下さい」

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