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恋の仕方_1
初恋が俺に教えたのは、自分の性的指向が他人からは受け入れられないと言う事実だけだった。
甘酸っぱくなんてない。ただ苦いだけの思い出。
だけど本気で人を好きになったのは後にも先にも、あの時だけだった。
「――って、先輩聞いていますか?」
「え…………?あ、悪い考え事してた」
「…………」
怒涛の社員旅行を終えて一ヶ月。
あれから俺達は特段何かが変わったわけでもなく、平穏な日々を過ごしている。唯一の変化と言えば、こうして仕事終わりに居酒屋へ立ち寄って二人で軽く呑むのが日課になった事ぐらいか。
「もしかして欲求不満ですか?」
「はぁ!?んでそうなるんだよ……」
「最近シてませんでしたからね」
「違うっての!」
聞いてんだか聞いてないんだか分からない乾いた笑いを溢した蓮沼は、徐に立ち上がるとスーツのジャケットに袖を通す。
「今日はそろそろ帰りましょうか」
「え……でも、まだ全然呑んでないだろ?」
「ちょっとペースが早かったようで、酔いが回ってしまったようです。ですから今日はもう帰りましょう」
「…………」
ね?と優しく見下ろしてくる笑み。
酔わないくせによく言う……。変な気遣いしやがって。
「…………分かった」
「ありがとうございます」
その代わり俺の奢りだと蓮沼の手にあった伝票を奪い取ってやった。
「いいんですか?」
「いいんだよ。こういう場面では後輩は甘えとくもんだ」
「ふふ、じゃあお言葉に甘えて。ご馳走様です」
こういう素直な部分を見ると可愛い後輩なんだけどな。
普段からこうならいいんだが……。
蓮沼には先に外に出るようにと声を掛け、手早く会計を済ませて後を追う。
「悪いな、待たせ――」
「――て事で、一緒にどうですか?」
外に出た俺を出迎えたのは蓮沼。それから蓮沼を逆ナンしている女性陣。
いや何となく分かってたけどな。そうなるわな、一人になんかしたら。
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