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第6話

(……っ、これ、ヤバいんじゃ……)  まさか、死ぬのか? ここで?  最後の走馬灯が、ここ一か月にあった嫌なことで? しかも、下半身は丸出しのまま。大人の玩具を挿入したりされたりしたままで? (せめて……ズボンだけでも履かないと……っ!)  身体を起き上がらせようとしたけれど、上手くいかない。それどころか、ぐらつく身体を支えられず、顔面から床にダイブした。  嫌だ。まだ死にたくない。こんな、「なんだかなぁ」の人生のままじゃ、絶対嫌だ。  そんな一心で顔を上げる。目の前には、もはやインテリアおよび脱いだ服掛けと化している姿見がある。  薄汚れた鏡面から、自分の顔が見えた。人から散々疎まれる原因となってきた、この三白眼。 「はは……」  思わず妙な笑いが漏れた。まあ、最期に泣くよりは笑う方がいいのかも、という打算的な考えが今の光希にあるはずもなく。  笑ったのは、今の自分が、あまりにも酷い顔をしていたからだ。鋭い目は隈で縁取りされた上に生気がない。肌も唇もぼろぼろだ。  そんな顔で上司の前に現れるな、か。言えてる。思わず納得しそうになってしまった。  そんな光希の人生だ。もう、ここで終わってしまっていいんじゃないか。  今のまま生き続けても、結局、自分ですら疎ましく思う自分のままなのだから。  生まれ変わったら――。  薄れゆく意識の中で、ふとそんなことを考えた。  生まれ変わったら、もっと穏やかな顔つきが良い。今より器用で、人見知りもしていなくて、信頼できる友人も恋人もいる。そんな状況と優しい笑顔が似合う人になりたい。  そういえば、オナニーもアナニーもよくしたけど、セックスはしたことないや。  ひとりであれだけ「ぶっ飛べる」のだから、ふたりならもっと気持ちいいのかな。  来世で体験できるといいね。  現世での自分へのさよならの代わりに、光希はそう呟いた。

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