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第8話
しかし、前世の記憶がある光希にとって、最も好奇心をそそられるのがE地区なのだった。
ピンクのお店が立ち並ぶ、という表現で済むような街ではないらしい。
ホテルが乱立しており、各種ルームコンセプトに凝りまくっている。大人の玩具だけを取り揃えたショッピングモールなるものが存在し、光希が前に生きていた世界よりも性能が高いものばかりが売られているという。
余談だがAVでよく見る例のプールも、E地区に数多く建てられているのだとか。
そして、E地区には羞恥などは存在しない。
正確には、存在しているが全てがプレイのスパイスとなっており、街中でヤり始める人々もいるらしい。
時も場所も問わず性行為をするための街。それがE地区だった。
成り立ちは、青少年を健全な雰囲気で育てたいという大人たちの願望だった。
けれど大人だって分かっている。本能が存在する以上、欲望や衝動は、人間から切っても切り離せない。
その結果が、徹底的なゾーニングだった。どの県でも、そういう地区はひっそりと端に追いやられている。
もちろん、18歳未満がそこに入る権利はない。
それなりの性教育を受けつつ、自分の行動に責任を持つという分別がつくようになって初めて入れる地区だ。
もっと言うなら、18歳になっていても、高校生を卒業しなければ入れない。
前世の高野光希は、ひとり遊びが趣味だった。もっと端的に言ってしまうなら、つまらない人生の中で、自慰行為がもっとも刺激のある遊びだった。
そして、その趣味の中で得た快感というのは、生まれ変わっても鮮明に覚えているものだった。
生まれ変わってもひとりでシコシコと竿を擦るだけのことはある。それでも、道具がなければやはり物足りないのだ。
すぐにでもE地区に向かって駆け出したかったが、やはり年齢制限がネックだった。
生まれ変わり、E地区の存在を知ってからおよそ18年耐えに耐えた。
長すぎる忍耐の日々も、もう少しで終わりを迎える。
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