時間は平等に流れていく。そして、ある程度落ち込んでいようと、身に着いた感覚で日常生活は遅れてしまう。 　卒業式が終わってしばらくは、ぼーっと過ごしていた。何か大きなことが終わってしまったような、取り返しのつかないものを失ってしまったような虚脱感だけが光希を包み込んでいた。 　それでも、来るべきキャンパスライフに向けてしなければいけないことは無限にある。光希は独り暮らしのための部屋を決め、家具をそろえ、そして大学入学まであと一週間程度となった四月の今日が引っ越し予定日だった。 「いい？　危ないところには行っちゃダメよ？」 「お前なら大丈夫だとは思うが……あまり羽目を外しすぎないように」 　卒業式の日、抜け殻のようになって帰ってきた光希を、両親は心配してくれたのだろう。もしかしたら、引っ越し準備に勤しむ姿を、気丈に振る舞っているだけだと考えていたのかもしれない。 　それもある意味間違いじゃない。 　だって、現に光希は、これから羽目を外そうとしているのだから。 　18歳。高校卒業。めでたく4月。想う相手もいなくなってしまった今、光希は転生前の趣味であるソロ活動を復活させるのだと燃えていた。 　この世界の両親は、とてもしっかりした人だった。光希をしっかりと育て上げ、光希もそれに答えた結果、絵に描いたような優等生の出来上がり。そのことはとても感謝しているのだ。 　こんなにも順風満帆な転生ライフを送れているのは両親のおかげだと。 　しかし、二人ともしっかりした人間である。エロに対するゾーニングもしっかりしていた。それはもう、テレビドラマで恋人二人が出ているだけでチャンネルを切り替えるくらいである。 　幼い頃、ただ純粋に好奇心で「E地区ってなぁに？」と訊いたら、「そんな単語、口に出すんじゃありません」と怒られたこともある。 　そんな家だったから、自慰行為なんか、竿をこするくらいしかできなかった。嘘。本当は床にこすりつけたり、乾燥予防のためのボディクリームで後ろを開発したりした。しかし、それも両親が留守の間という条件付きのタイムアタックだったので、身体的にはスッキリしても精神的には満足しない。もっと長時間、道具を使って肉欲に耽溺したいのにと、日々我慢の連続だった。 　 　でもそんな日々も今日で終わりだ。