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第22話
「あの……しょくしゅ……」
「触手?」
「そう……どの色を選べばいいのかわからなくて……」
そして出てきた言葉がこれだ。カラーバリエーションなんて、個人の好みに過ぎないだろうに。それでも、透は律儀に答えてくれた。
「まあ、無難にいくなら水色だろうな」
「なんで!?」
「そっちこそ、なんでそんなに驚くんだよ。いきなりデカい声出すからびっくりしたわ」
「あ、いや……だって、僕はピンクの方がいいなって思ってて……」
「……ピンク色の方が可愛いからか?」
「違うよ! 水色の触手だとただのスライムっぽいから! でもピンクの方は突起がびっしりついてるっぽいしぬるぬるした目がグロテスクでいかにも凌辱モンスターっぽいから――」
途中まで語ったところで、光希はふと我に返った。周囲の目を気にしてみるが、E地区ではこれが日常茶飯事なのだろうか。
「ははっ、その外見でとんでもないこと言うんだな」
透が面白そうに笑う。笑顔を見るのはこれで三度目。でも、ツボに入ったのか、腹まで抱えて笑っているのを見るのは初めてだ。
「ピンクでもいいけど、そっちはいわゆる恋人用。一人より二ルの方が盛り上がるように作られてる」
「そうなんだ……」
残念。じゃあ無理だ。なんて諦められるほど溜まった鬱憤は伊達じゃなかった。
それに、透を見ていたら、何故か前世の自分を思い出したのだ。最期、ひとりで虚しく倒れていった高野光希を。
――そういえば、ひとり遊びはよくしたけど、セックスはしたことないや。
――ひとりであれだけ「ぶっ飛べる」のだから、ふたりならもっと気持ちいいのかな。
――来世で体験できるといいね。
なのに、自分は卒業式の日に伝えたいことも伝えられないままで。
「あ、あのさ……!」
とはいっても、今さら素直に気持ちを言えるような自分でもない。だから、言いたいことと少しずれた言葉が出てくる。
「よければ、透が教えてくれないかな。……二人用の、玩具の使い方」
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