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第23話

 滅茶苦茶なお願いをしているのだと、自分でもわかっている。  でも透は渋らなかった。むしろ、彼は光希の方を心配しているようだった。だから、わざと何でもないことのように振る舞った。  「ここであったことは口外しない」。「変な勘違いもしない」。それもE地区での常識だから。  透があまりにも平然としているものだから、もしかしたら……商品の品出しとかポップづくりとかレジ打ちの他に、商品の使用方法レクチャーとかいうバイトがあったり……嫌だなと思い、光希はその先の妄想を、かぶりを振って打ち消した。  透は光希をあっさりと、スタッフオンリーの扉を潜り抜けた先の小部屋に通した。シンプルで狭い部屋だった。ベッドと、いくつかの戸棚。それと洗面台。奥へと続く扉はきっとシャワールームなのだろう。常連客に貸し出している部屋なのだと彼は説明してくれた。 「俺はまだやることあるから。そっちはそっちで準備してて」  そう言って、彼は光希をひとり、部屋に置いていってしまった。出ていく直前に、「我慢できなかったら先に始めてていいぞ。ごゆっくり」という余計な一言も忘れずに。  おそらく、初心者の光希を慮っての一言だったのだろうけど、見事に逆効果だった。  とりあえずシャワーを浴びて。それからきっと使うだろうからうしろを解して準備して。その間中、ずっと落ち着かなかった。  指先は震えるし、心臓はドキドキを通り越してもはや痛くなってくる。変な勘違いはしないと言ったばかりだったのに。成り行きとは言え、彼と大人の遊びができるのだから仕方ない反応だろう。  シャワールームから出て、ひとり全裸でベッドに腰かける。これが本当の全裸待機だが、実際にやってみると結構間抜けな有様だった。気を紛らわそうと部屋の中をきょろきょろ見回してみるものの、特別な何かが置いてあるわけでもない。

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