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第24話

 彼は先に始めててもいいと言っていた。この緊張の中、さすがにそれができるほど神経が太くはないけれど……触手の説明書でも読むか、と光希は袋の中からそれを取り出した。文字を読んでいる間に、少し落ち着いたり、もしくは逆に興奮しきって頭がピンクに染まり吹っ切れるかもしれない。  こちらの触手は高度な部品でできています。ですが手荒く扱っても千切れることはありません。また、人体の温度を感知して這うため、他の生物の害になることもありません。マジか。すごいな触手。  なお、人ひとりを難なく拘束可能なため、使用の際は必ず両者の合意を得た上で――。その辺りで、疑問が出てくる。  人を拘束できるくらいの質量が、このA4程度の袋に、どうやって入ってるんだ?  もしかして、じっくりと育てていくタイプだろうか。それは困る。今回、買った玩具は数多くあれど、せっかく透もいるのだから、二人用の玩具を使いたい、そしてできれば触手がいいという気分だったのに。  文字を読んで少しは落ち着いたところで、今度は好奇心が顔を出した。ちょっとくらい、開けて中を見るくらい構わないだろう、と。もともと、光希が買った玩具だし。先に始めるわけじゃなく、ちょっと見るだけだ。 「でか……」  封を切ると、でろんとした先っぽが出てきた。照明でぬらぬらと光るそれはとてつもなくグロテスクで――俄然、興奮する。  中身は真空パックにでもなっていたのだろうか。空気を感知した途端、肉塊とも呼べるそれはずるずると光希の方へ這ってきた。正直言うと、ちょっと怖い。 「ぷにぷにしてんのかな……どっちかって言うと、ぶにぶに……?」  どのみち、人を感知できるのだというのだから、放っておいてもこの触手は光希に近づいてくるのだろう。 「まあ、ちょっと触るぐらいなら、いいか……」  手を伸ばせば、指先にぬるぬると絡みついてくる。見た目はえげつないけど、ちょっとペットみたいで可愛いかもしれない――なんて、考え方が甘かった。

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