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第25話
先に初めていても良いと言ったのは透の方だった。けれど、まさか一人で先にこんなにも楽しんでいるとは思わなかった。
「あ、あぁ……っ、や、なに、これぇ……っ」
彼は仰向けでベッドに固定されていた。白い肌に、赤黒い肉塊がずるずると絡みついていく。太さは大小様々で、太いものは腕を拘束し、脚を開かせていた。一方で細い方はといえば、刺激を与える目的のもので、首筋から脇腹を這い回っている。
「あっ……、あつい……っ」
触手が纏っている粘度の高い液体はローションだ。肌に馴染むと熱を持つし、掻痒感をもたらす。要するに、触れて、擦って、舐めて、噛んでほしくてたまらなくなるというものだ。けれど、光希は腕も脚も拘束され、思うように動かすことができない。
赤みを帯びてぴんとかたくなった胸の突起も、だらだらと先走りを零す勃ちあがった性器も、思うままに自分で擦り上げ快感を得たいところだろうに。触手は肝心の場所には触れないまま、光希の二の腕にぬるぬると絡みついている。
今の彼では、じりじりと攻め立ててくる快感の波に、微かに震えながら悶えることしかできないはずだ。
「俺を置いて、先に随分とお楽しみみたいだな」
「ち、ちがうっ……コイツが、勝手に……っ」
ベッドには、封を切られた袋が転がっていた。興味本位で開けてみたら絡みつかれてそのままのパターンだろうな、と透は当たりをつけた。
「とおるっ……とおる、たすけ……んっ、や、あぁ……っ」
必死の懇願は、途中で艶を帯びた喘ぎ声に変わる。
「説明書、全部読んだ? コイツ、声にも反応するようにできてるんだよ」
「そんっ……ん……っ」
光希は律儀にきゅっと唇を噛む。エロいことに興味津々ですという顔をしながら透に使用方法を教えてくれと言ってきたのに、今のこの状況を妙に恥じらっているのが不思議だった。初めてならこんなものだろうか。透が相手にしてきた大人たちは初めてとは程遠い人ばかりだったから、新鮮な反応だった。別に、声くらい出したっていいのに。
もっと声を出させたい。恥じらわせてみたい。だったら、さっき倉庫から探して持ってきたこれも使おうと、透はスイッチを押した。うん、ちゃんと映ってる。画面の中は圧倒的肌色率だけど。
「な、なに……それ……」
か細い声は、僅かな好奇心と怯えが混ざり震えていた。
「そっちが言ったんだろ? 一人ではできないことで、二人ですることをしてみたいって」
ふと、撮影とかしてみただどうかなと思い、ハンディカメラを持ってきた。ハメ撮りまでするかどうかは分からないけれど、撮影プレイも二人ならではのものだろう。とはいえ、部屋に戻ってきたら、恥じらうインタビューから始められるような状況じゃなかったわけだけど。
「光希が悶えてるとこ、俺がちゃんと撮っておいてやるから」
「やっ……」
機能的なズームではなく、物理的に彼の肌にカメラを近づける。
「ははっ、しっかり反応してる。わかる? ピクピクしてんの」
「あっ、やだ、いうな……っ、うつすなっ……」
撮られていると知り、脚を閉じたいのだろうけれど、分厚い触手がうねうねと絡みついている状況では無理な話だった。むしろ、ただもじもじと腰を動かしているようにしか見えず、より劣情を煽るだけになる。
「……顔も撮っとくか」
「やだ……ぁ……」
「そう? 可愛いのに」
からかうように笑いながら言うと、ただでさえ赤らんでいた光希の頬が、かっと赤くなった。
「いいね。白い肌が赤くなってんのも。泣きそうな目も。早く触ってほしいって震えてんのも」
「ひぅ……っ」
「あ、反応した」
早く触ってと言わんばかりに、腰がびくんと跳ねた。
「ち、ちがう……あ、やだ……あぁんっ」
温度と声――この場合、両方か――を感知した触手が内腿あたりに伸び始める。また肝心なところには触れず、性器すれすれを撫でていくだけだったが。
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