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第30話

 そんな人間関係を重ねていくうちに、透は学校へよく遅刻していくようになった。  夜にずっと離してもらえずヤりっぱなしだったり、もしくは朝起きて離してもらえずもうワンラウンド、さらにはもうずっと離したくないからと、朝起きたら手首が手錠で繋がれていたこともあった。  どこからか噂が広まったのか、透がE地区に住んでいることが知られると、遅刻魔の称号は不良のサボり魔へと変わり、学校の友人は彼から離れていった。蔑みの対象にすらなった。  ただ一人、教師に透の世話役を押し付けられた光希を除いて。  会話が弾む仲というわけでもなかった。一度だけ、放課後に少し話をしたことはあるが、それだけだ。  他は、会議の時に板書を頼まれたり、プリントを渡したり渡されたりと、同じ生徒会メンバーとして、最低限の付き合いしかしかなかった。  それでも、そんな自分のどこを気に入ったのかは分からないが、透は光希からの視線を度々感じていた。友情か親愛か恋慕かは分からないが、どうやら好かれているらしい。  とはいえ、透の方からアクションを起こすことはなかった。光希は、いわゆる王子様系というのだろうか。穏やかな物腰に甘い声と微笑みで、とこか慎ましさもあって。夜の街で生活している透とは対照的に、朝の陽光がよく似合う。  生きる世界が違うのだ。最初はそんな風に思っていた。  違うと気づいたのは、放課後、光希と後輩の保阪の会話を盗み聞きした時からだ。

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