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第33話

 気絶するように寝てしまった。そして起きた後も、光希は甲斐甲斐しく透に世話を焼かれてしまった。  起きてすぐ水を渡してくれたし、喘ぎすぎて喉が痛いと言ったらのど飴もくれたし、寝ている内に服もベッドのシーツも綺麗に洗濯されていたし、帰りはどれだけ大丈夫と言っても駅まで見送ってくれた。  一連の流れにわざとらしさなどまったく無かったから、透は素でやっていたのだろう。  それはそれとして。  一人、部屋に帰って来てから――違う。電車に乗っている間も降りてとぼとぼと歩いている間も、透は猛烈に後悔はしていた。けれど現実感が無かった。数時間経って、現実を受け入れたところに、後悔が一気のしかかってきた。  荷解きもされていないダンボールに囲まれて、電気もつけず薄暗い部屋の中で、光希は頭を抱えて蹲る。  やってしまった!  エロい雰囲気に流されて。好奇心に駆られて。頭の中では、言い訳がぐるぐると渦を巻いている。でもどれもこれも言い訳に過ぎず、時間は巻き戻せないし、やってしまった事実も消えない。  透のことは、憧れだった。何を言われても俯いたりせず、堂々と歩いている姿に見惚れた。今は上手く話せずとも、数年後、いつか丸くなった彼と同窓会で、「あの頃、実は憧れててさ……」なんて話せる日がくることを夢に見ていた。 (次に同窓会で会ったら、確実に気まずいよな……)  ということもあるが、こんな考えだってただの現実逃避だ。

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