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第51話
「もし生徒会の仕事で分からないことがあったなら、僕の不手際だから、遠慮せずにちゃんと……」
「――――で」
光希の言葉を遮るように、慎司が口を開いた。けれど、声は緊張で掠れて上手く聞こえない。
「ごめん、もう一回……」
「E地区6丁目14番地」
今度ははっきりと聞こえた。と同時に、顔から血の気が引いていくのが自分でも分かった。
その住所は知っている。モニターをする時に資料で見ていたからだ。
「その住所が、どうかした……?」
「いましたよね。鏡張りの部屋に」
そう言えば、透が言っていた。あの時、知り合いに見られていたかもしれない、と。けれどE地区に入れる年齢じゃないから気のせいだとも。
「この目で見たので、間違いありません」
「待って! E地区の入場には年齢制限が……」
「兄の身分証明書を出して自分ですって言ったらいけました」
警備がざるすぎる。
「たとえ入れたとしても、君はまだ入っちゃ駄目だよ」
「僕だって入りたくて入ったわけじゃありません! 先輩が下りていくのが見えたので、つい……」
つまり、彼はあの場所での暗黙のルールを知らなかったわけだ。だから知り合いの姿を見ても、見ていない振りはできなかった。
「なんであんなところで……あ、あんな、破廉恥なことを……」
「それは……」
彼の慕う先輩のイメージを崩さないよう、頭は必死で言い訳を考えようとしているのに、その片隅で、破廉恥って言葉は久々に訊いたなぁなんて思っていたりする。
「もしかして、脅されてるんですか!?」
「えっ?」
「一緒に……その、アレなことしてた相手って、西田だったじゃないですか! 彼は不真面目だし素行不良だし、人のいい先輩につけこんで無理矢理……!」
「ちょっ、待ってってば! とりあえず僕の話を聞いて!」
脅されているどころか、むしろ最初はこっちから彼に頼み込んだような形なのだ。しかも最近は自分の書いたレポートが評価されてノリノリでやっているところまである。
「えっと……彼と、その、せ……ああいうことをしたのには、理由があって……」
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