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第56話
「仮に聖母だったとしても、光希にだって性欲くらいあるんだよ。前に見たって、ちゃんと見たのか? 光希もかなりノリノリだっただろうか」
「そ、それはきっと演技で……!」
「演技力すげえな……じゃあ確かめてみる? 本当に演技かどうか」
「やっ……」
脇腹あたりをするりと撫でられ、思わず声が出る。声が出るだけで、身体はその先の快楽をもう知ってしまっている。本当に嫌がっているのなら、もっと噛みついたり叫んだりするのだろうか。
「何が嫌? そういうプレイ、好きじゃん」
「そりゃあ、好きか嫌いかで言われれば好きだよ……」
人前で……というのはこなした今となってもハードルが高すぎることには変わりはないが、数多の視線がスパイスとなっていたことは否めない。
「でも、これは違うだろ! 興奮してる僕を見て興奮してもらえるのはすごくクるけどそれは見たい人が見てるからだ。見たくもない人に見せるのは、プレイじゃなくてセクハラだろ!?」
久々に大きな声を出した気がする。というか、前世でも現世でも、こんな声を出したことはなかったかもしれない。焦っているやら驚いているやらで、思わず声が出た。近所迷惑になっていないといい。
肩で息をしながら、透の手が止まっていることに気づいた。分かってくれたのかと期待して顔を見ると、笑いを堪えているのが分かった。何故か。答えは目の前にある。
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