61 / 101

第61話

前世暮らしていた日本と似すぎていて、うっかり忘れそうになる。ここは光希が短い間暮らしていた日本とはまた違う、いわばパラレルワールドな日本なのだろう。だから、エロに関しては徹底的なゾーニングが敷かれている。  コンビニや書店にエロ本が並ぶこともなければ、電子書籍で買えるわけでもない。大人の玩具だって通販などできないし、お城のようなホテルはどこにも建っていない。  それらはすべて、E地区に集められ、エロ要素をさらに濃縮し、独自の文化として発展を遂げている。  ゾーニング、いわゆるE地区以外エロ禁止令は、都道府県の条例で定められていることが多い。つまり、破れば条例違反――になるのかもしれない。光希は法律に明るくなく、ついこの間まで、生徒会活動と受験勉強に励む一学生だったのだから、詳しく知らないのだった。 「部屋でいい雰囲気になって盛り上がったと思ったら、わざわざ外に出て電車乗り継いでE地区まで行くって? それまでに興奮は収まるだろ」  つまり、恋人や夫婦は、わざわざ交通費をかけることはく、お家デートからベッドになだれ込むのが鉄板らしい。 「でも、条例……」 「みんなバレないようにやってるんだよ」  赤信号、みんなで渡れば怖くない、というやつ。それでも、十数年優等生として育まれた理性が、怖くないからって赤信号はみんなで渡るものではないのだと足止めしてくる。 「バレなければ大丈夫だって」  こうなってくると本当に、優等生をたぶらかしている不良の構図が出来上がってしまっていた。 「それに、光希は『イケないコト』って響き、嫌いか?」 「好き! ……あ」  しかし、光希の理性は、想像以上にもろかった。 「部屋でやったからって通報されるわけじゃないし。大きな声を出さずに、あまり激しすぎなければ気づかれないだろ」

ともだちにシェアしよう!