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第69話

「まあまあ! ってことは、ただのお友達じゃないのよね!? VIPルームも、特別ガラス室も、透と一緒に仲良く使ってくれたのよね?」    そうだった。レビューするために借りた道具や部屋は、二人にとっては商売道具で。借りたからには許可がとってあるはずで。だったら、それを使って透と何をしていたかなんて、とっくに予想がついているのだろう。 「っていうか、なんで二人ともここにいるんだよ。今日店に出てるんじゃなかったのか」 「だって、透が誰か連れてくるっていうんだもの! 気になるじゃない?」 「今は、バイトリーダーの子に任せてるよ。上手く回してくれてる……お前は特定の子にこだわるということがなかったからね。親のエゴだが、どんな子か知りたいと思ったんだよ」 「ペンネームから、どんな子だろうってずっと考えてたのよ!」 「す、すみません!」 「謝る必要はないよ。ペンネームも、小学生男子みたいで面白いし」  それは、果たして褒められているのだろうか。 「そうそう、まさかこーんなに清楚で綺麗な子だったなんて! まさにギャップ萌えってやつよね! 透とは、友達なのか恋人なのかが、気になるところだけど!」 「それは……その……僕なんかでいいのか、わからなくて……」  そう答えた光希の本心は、照れが半分と本音が半分だった。 「男同士だし……やっぱり、親なら孫の顔が見たくなるのかなって……」  かなり踏み込んだ質問にも、返ってきたのはあっけらかんとした返答だった。 「あら、そんなの別に気にしないわよ」 「そ、そんなの……?」 「そんなのはそんなのでしょ? 透と私は、別の人間だから。透のことに首をつっこみたいのはただの興味本位。そこに文句をつけるなんて、人の家に土足で入り込んで飯をよこせって言ってるようなものよ!」 「すまないね、妻は例えが下手で」 「ひどいわダーリン! 頑張って考えたのに!」 「まあ、そんなこんなで、僕達は透が好きに楽しく生きてくれればいいと思っているのでね」  以前、透は自分の親のことを放任主義だと言っていた。家族仲に問題があるのかもしれないと頭を過ぎったけれど、どうやら良い意味でおおらかに育てられてきたらしい。そもそも、おおらかで自由でなければ、幼い子供と一緒にE地区に住もうとは思わないけれど。 「じゃあ、俺らは好きに外で遊んでくるんで」 「もうちょっと話しましょうよ、おやつあるわよ!」 「母さんの興味本位に振り回されるのはごめんなんだよ……」  それから、今入ってきたばかりなのに、透は光希の手を引っ張り、玄関に連れていく。 「おやおや、せっかちだね。VIPルームの鍵ならいつでも貸すよ。新作の玩具も」 「いいんだよ。今日はそういうんじゃないから」  お宅訪問はほんの10分程度で終わろうとしていたが、いつもとは少し違う透が見られた。ぶっきらぼうで、少し照れていて、年相応で……前世の記憶がある光希からすれば、少し年下の可愛い男の子に見えてしまったのは、内緒の話だ。

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