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第71話
「この後はどこに行くの?」
少し足早に行きと同じ道を歩いているので、このまま進めば駅に着く。部屋でのんびり、という用件がなくなってしまった。だから駅で解散、なのだろうか。それはそれで、寂しい。せっかくの透と二人の休日なのに。
「光希は、どこに行きたい?」
「……え?」
「なんだよ。メール読んだんだろ?」
「うん」
透と会う日はいつも楽しみで、前日には何度もメールを読み返す。
「部屋でのんびりできなくなったから、別のところでのんびりしようと思って」
「だったら、お母さんにVIPルームの鍵を借りた方が……」
「セックスは別にのんびりしてないだろ。どっちかっていうといつも激しめだし」
さらりと数々の情事を思い出させる発言をぶっこまれ、意図せず顔が赤くなる。
「部屋でのんびりできないなら、外でのんびりできるところに行こうぜ。どこがいい?」
透は、美術館、博物館、カフェ、ショッピング、といくつか案を出していく。最終的にはゲームセンターとかスポーツ施設とか、のんびりから遠ざかっていったけど。
「うーん……」
「乗り気じゃない?」
「違う! 違うよ! 迷ってるだけ!」
「ああ、そういえば、普段はあんまりそういうところで書けないって言ってたもんな。イメージしづらいか……」
それから、透はしばらく考え込んだ。
「食べ物とかで、何かねぇの? これ気になってるとか――」
「タピオカ!」
「他には?」
「ふわふわのパンケーキ。家系ラーメン。クレープ」
「スイーツしばりじゃないんだな」
少しおかしそうに笑って、携帯を取り出し検索をかける。
「それにしても、懐かしいチョイスだよな。俺たちが生まれた頃に流行ってた食べ物だろ、それ。光希ってレトロ趣味だっけ」
「趣味っていうか……気になってる」
タピオカもパンペーキもラーメンもプリンも、自分と同年代が、時には友人と、時には恋人と楽しんでいた食べ物だ。単純計算で、前世から18年時間が流れている。もはやひと昔前の食べ物扱いなのだろう。それでも、当時、それらを遠目に見ているしかなかった光希は、今、初めて透と一緒に食べたいと思ったのだ。
「じゃあレトロを売りにしてるカフェでも探して……あった、想像通りD地区だな」
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