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第97話

 息が止まった、かと思った。  自分に声をかけてくれた青年は、明らかに透と似ていない。でも、光希に「見つけた」と声をかけるのは透しかいない。  それにしても、再会が18歳未満立ち入り禁止の玩具コーナーとは、ムードもへったくれもあったもんじゃない。いや、むしろ自分たちらしいのだろうか。二人の再会はここだと目に見えない意志に突き動かされているみたいだ。  光希がずっと黙ったままなので、不審者と勘違いされていると思ったのかもしれない。青年はあっさりと掴んでいた手を離す。誰かの温もりを名残惜しいと思ったのは初めてだ。病院のベッドで寝ていた時に見ていた夢を覗いて。 「えっと……すみません、俺、この近くのコンビニで働いてて、お兄さんとも何度か顔は合わせてるんですけど……」  光希よりも年下なのだろう。喋り方も丁寧で、どこか下手に出ていて、透とはまったく違う。外見だって、どこか尖っていて危険な雰囲気を持っていた彼とは違って、実に爽やかな好青年だった。  それでも、知ってると思った。光希は、彼を知っている。 「それで、最近まで……実は意識不明で入院してたんです。だからコンビニにもいなくて……あ、入院っていっても大した怪我でも病気でもないんですけど」  それも知ってる。正確には、入院しているとまでは知らなかったけれど、彼も自分と同じ夢を見ていたらいいなと思ってたから。 「俺は、意識が戻ってからずっと、知り合いを探してて……貴方の顔を見た途端、あ、この人だって思って、そしたらそういえば前にコンビニに来てたお客さんだって気づいて、ついつい手を掴んじゃいました。すみません……」  光希が何も答えないのを気にしてか、飼い主に叱られた犬のように青年はうなだれている。何か言わなきゃと思うのに、確認の意味も込めての名前しか出てこなかった。 「西田、透……くん?」  そう呼びかけると、青年は――透は、嬉しそうに頷いた。

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