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 時間ギリギリまでくっつきあって、ホテルを出た。  時刻は17:00過ぎだけれど、まだまだ空は明るくて、夏の盛りだなとしみじみ思う。 「手繋ごっか、駅まで」  藤堂くんの大胆な提案に、おれは迷いなく乗った。  鶯谷だし。  そっと手を繋ぐ。  幸せで、ふわふわして、浮かれて仕方がない。  でも、別れの時間も迫っていた。 「藤堂くんは? このあとはどこか寄る?」 「寄らない。…………というのはごめん、嘘で、ふみと別れたあと、本屋に寄って帰ろう思う。漫画をなぜか1冊だけ失くしちゃって」  藤堂くんは、目を泳がせた。  おれは握る手を強める。 「ごめんね、こんないいムードのときに嘘ついて」 「気にしてないよ。大丈夫。ていうかおれね、藤堂くんはちゃんと嘘ついたって言ってくれるから、絶対隠しごとはないって信じてる。逆に」  藤堂くんは大きく目を見開き、ふにゃっと笑った。 「……ふみは優しい」 「ほんとにそう思ってるだけだよ」  繋いだ手をぶらぶらしながら、おれは尋ねた。 「ねえ、夏休みのデートって、きょうでおしまい? また高校生が行かなそうな街シリーズする?」 「んー、そうだな。また遊びに行くのもいいけど、……もしよければ、ふみの家に行ってみたい、かも」  控えめに尋ねられて、ドキッとしてしまった。  どうしよう。うちに、藤堂くんが、くる……?  緊張で吐きそうになりながら、答える。 「うん。いいよ。来週は姉がサークルの合宿でいないから、夜遅くまでいても……泊まっても」 「えっ? 泊まってもいいの?」 「うん。うちの親、そういうのなんも言わないから」  心臓がドキドキしてうるさい。握る手を強める。  彼は、このあと本屋に寄るという。  そしておれの家に来たいと言った。  その事実をふたつ組み合わせると、こんな予感が脳裏をよぎった。  おれはもう、フラれるのかもしれない――  おれは本当は、ダメなやつなのだ。  藤堂くんの嘘がどうとか、偉そうに言えた立場じゃない。  ついに彼が、そのことに気づいてしまったのではないか。  そして、おれの部屋でそれを確かめて、暴くのかもしれない。    リュックの中でごそりと音を立てるいちごパフェに思いをめぐらせ、密かに息を吐いた。

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