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第7話
「寂しいですね、この子達の世話が出来なくなるの……」
「あぁ、だが向こうにはもっと多くの馬がいて、そちらの世話がある」
卒業に伴い、俺たちは学校の馬の世話が出来なくなる事が決まっていた。
最後の世話を終えた後、俺たちは厩舎にある休憩所で話をしていた。
「先生も復帰される事になって、オレ、すごく安心してます」
満面の笑顔を見せてくれるアレクサンドル。
今日の青空が似合うその笑顔に、俺は心が温かくなった。
「復帰するから俺はもう先生じゃない。年齢は違えど同じサモセク騎士団の騎士だ」
「あっ、そっかぁ、そうですよね!じゃあ先生の事、何て呼べばいいかな……」
悩んでいるその姿さえ愛らしく見えて、目が離せない俺がいた。
「ミハイール、さん?でもいいですか?」
見た事のないすごく戸惑う様子に、俺は笑ってしまう。
「えっ、何で笑うんですか?」
そんな俺に、アレクサンドルはその大きな瞳を丸くして尋ねてきた。
「あぁ、済まない、そんな状態のお前を初めて見たから面白くてな」
こんなに笑ったのはいつぶりだろう。
「ひどいです!これでもちゃんと考えたんですよ!!」
「そうだよな、済まん……」
むくれているアレクサンドルの頭を、俺は撫でてしまっていた。
「先生こそオレの事、まだ生徒だと思って見てますよね」
俺に撫でられたアレクサンドルは、まだむくれているが少し頬を赤らめている。
こんな時、俺は彼も俺の事が気になってくれているんじゃないかという錯覚に陥ってしまう。
「そうかもしれないな」
「もう、違いますから。自分で言っといてそれはないですよ~」
この笑顔を独り占め出来たら。
そんな思いに駆られるが、彼に想いを伝える勇気がまだ持てなかった。
「……じゃあ、俺に敬語は使わなくていい。それと……俺の事はミーシャでいい。騎士団にいた時はほとんどの人間にそう呼ばれていたんだ」
「えっ!?」
今の俺にとって、彼への想いを表す精一杯の愛情表現をしてみる。
「ホントに……良いんですか……?」
頬を赤らめたまま、アレクサンドルが尋ねてきた。
「あぁ、構わない」
その瞳を見つめながら応える俺。
そんな俺にアレクサンドルは一瞬の沈黙の後、
「嬉しい……!!なんか……すごく距離が縮まった感じがして……」
と話し、すごく嬉しそうにしてくれた。
「そうか……」
顔には勿論出さなかったが、俺も嬉しかった。
「……ミーシャ、これからもよろしく!!」
少しぎこちない様子で俺の愛称を呼びながら、アレクサンドルは俺に手を差し出してくる。
「……あぁ、こちらこそ」
俺は少し日に焼けているその手に触れ、アレクサンドルと握手を交わした。
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